とある隊士のはなし。

２　後輩 ページ2

体に、鞭を打った。無理やりでもと、身体を動かした。

　悔いだけは、残しちゃダメ。そうじゃないと、私じゃないでしょう？



　―――呼吸を使うんです。傷の応急処置は大体それですみます。


　うん。ありがとう、しのぶさん。私、頑張るから。

　呼吸で内蔵の出血を無理やり止め、周りの群がってきた鬼を一掃する。今の私はそんなに歩けないから、さっき押しつぶされたときに少なからず額や口から出た血の匂いに寄ってきた鬼どもをただひたすらに斬った。

　どれくらいか経った頃に、建物が揺れた。どんどん上に上にと建物があがっていく。

　地上に放り投げられて、最初に目視したのは宿敵、無惨と対峙する後輩の姿。そして迫る攻撃。

　




　―――なあ、もし無惨と会敵したらどうする？






　―――決まってら、少しでも無惨と戦えるやつを攻撃から死守するんだよ。





　そう、言った隊士の亡骸が向こうに見えた。目が合った気がした。頼んだ、と言われている気もした。

　なあ、炭治郎。お前はすげえよ。私が二年でやっと得たものを、お前はすぐ追い抜いてく。そんなお前に、心底あこがれた。

　あこがれたやつを守って死ねるなら、悔いは、ねえよな？






　―――うん、これ以上ない死に方だ。






　最後の悪あがき。そうかもしれない。でも、それでも。




　最後まであがいたなら、胸張って頑張ったといえる。




　炭治郎に当たる攻撃の寸前に飛び出る。


　背中から、ざっくりと攻撃が当たる。


　唖然とした顔が見える。


　震える唇を制し、なんとか言葉を絞り出す。

　「―――悔いは、ない。」

　にっと笑った。力は尽きた。






　―――あとは任せた、自慢の後輩




　最終局面にて、一人の隊士の命が尽きた。

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