1 彼女 ページ1
―――あなたは、なんで鬼殺隊に?
そう、まっすぐこっちを向いて聞いた心優しい少年は無事だろうか。あの時、私はなんて答えたんだろう?ああ、思い出した。
―――鬼がいると知ったうえで、普通に生きることもできたと思う。でもね、それだと自分に大きな悔いを残すと、「お前は何も知らない人の幸せを踏みにじって生きている」と自分を許せなくなると、そんな気がしたんだ。ただの自己満足だけどね。
今考えると、陳腐な答えだなと思う。まあ仕方ないだろう、そうとしか言えなかったんだ。
鬼に家族を奪われたわけじゃない。ただ、食われそうになった所を助けてもらっただけ。それでも、私は鬼殺隊への入隊を決め、まあなんとか二年近く鬼殺隊で生き残り、とうとう丙にまでなった。頑張った方じゃないかと思う。
後輩の癖が強い子たちは才能があるようでどんどん追い越す勢いだし、相変わらずお世話になっている蝶屋敷の主人、しのぶさんは強いし。頑張らねば、って気合を入れなおし柱稽古を受けていたらこれですよ。
最後の戦いになる。生きるか、死ぬか。そう、二年間で培った直感が言ってる。
いきなり足元に穴が開いて、落ちて着地を何とか済ませたら鬼、ごちゃごちゃいるし。
「…とりあえず誰かと集合しなきゃ。」
ここら一体の鬼を狩り終え、カラスの先導に従って進む。
―――悔いだけは、残さぬように。
そうして生きてきた。そう思えば、私は正しい選択ができた。だから私の行動原理はいたって単純だ。悔いに残るか残らないか。ただ、それだけ。
正しいんだ、カラスに従うのが。
そう、思っていたのに。
「―――カァーーー!!カァーーー!!胡蝶シノブ、上弦ノ弐トノ激闘ノ末ニ、死亡ーー!!」
どく、と心臓の音がした。
____死んだ?強い、あの人が?優しい笑顔の、あの人が?
取り乱した。ほんの一瞬。ただ、ほんの一瞬だった。
ドガッ!!という音とともに壁が私を押しつぶした。
みし、という嫌な音もした。骨を何本かやられたと思う。
駄目だ、と本能が警鐘を鳴らす。今戦ったら、足手まといどころじゃない。私が、死ぬ。
でも、と理性が問いかける。今戦わなくて、いつ戦うの。もう最終局面だ。後輩たちだって必死に各自上弦と戦ってる。しのぶさんだって、こんな姿は見たくないでしょう。
―――悔いの残らないほうを。
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むえり(プロフ) - 静乱さん» 静乱さん、いつも応援をいただき本当にありがとうございます!細かいところまで読み取っていただきうれしい限りです!新作のほうもどうぞ温かい目で見てください…!頑張りますので!! (2021年1月7日 21時) (レス) id: 4cdf368576 (このIDを非表示/違反報告)
静乱(プロフ) - 夢主の炭次郎との才能の差への葛藤やそれでも悔いのないほうをという決意、私の推しであるしのぶさんとの関係。そして最後の「心底幸せそうに笑った。」で終わる終わり方...!!泣きました。とても涙腺に攻撃されつつ温かい作品でした! (2021年1月7日 19時) (レス) id: 75442ce433 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むえり | 作成日時:2020年11月24日 4時