好き?嫌い? ページ49
不満そうなムスッとした顔を向けられる
そんなこと言われても、その反応は私が本来したかったのだけれど…
『いえ、あの…だから、付き合ってると思われ⸺』
「同じことを何度も言うな」
『ぇ、あ、…はい』
どういうことだ
返事はしたものの、わからず考え込む
「…俺に気があるんだろ。お前こそどういうつもりだ」
『えっ…!!それは……そうです…けど………』
"気があるんだろ"なんて、
そんな自分の思いを寄せている人から直接そんなこと言われる
顔を赤面させて糸師くんから目をそらす
「じゃあやっぱり浮気じゃねーか…」
『でもそれとこれとは話が別ですっ!』
「つまんねーこと何回も言ってんじゃねーよ。くどいぞ…
逆に付き合ってねーのかよ…」
そっぽを向いてポツリと呟かれた言葉
自分の思考が停止する
今の糸師くんの言葉を頭の中で何度も何度も繰り返し、意味を理解しようと努める
『えっと…糸師くん…ごめん。あの…私よくわからなくて…』
"逆に付き合ってねーのかよ"
ということは糸師くんは、
自分は付き合っていると思っていた⸺
そういうことなのだろうか
『で、でも、付き合うっていうのはお互いに好きじゃないと成立しない…し…』
と、説明をする私の言葉にも特に反論はない
そっぽを向いたままである
反論をしないということは…
それはつまり…
私の思い上がりじゃない…そう思っていいのかな…
『こ、こんなこと聞いてごめんね。糸師くんは……私のこと……どう思ってくれてるの?』
黙ったまま何も言わない彼に、答えを吐き出させようとらしくもなく彼を追い詰めてしまう
『き、嫌い??』
「あ"??」
機嫌の悪そうな顔でこちらを振り返り、私の顔を射抜く
『じゃあ…好き?』
"好き?"
そう聞けば、彼は少しばかりピクリと体を反応させる
そしてまたフイとそっぽを向いてしまう
けれど、さっきとは明らかにちがうところ
そっぽを向いた糸師くんの髪の隙間から見える耳が少し赤いことがわかる
どうしよう…
自惚れかもしれないけど、今とても嬉しい。嬉しさで頬が緩むのを隠しきれない
「⸺…ねぇだろ…」
『え?』
「嫌いなやつと付き合ったりするわけねーだろ…」
一度聞き取れなかった彼の言葉も、
今度は確かに私の耳に深く入り込んだ
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作者名:あれん | 作成日時:2023年7月17日 23時