目撃者 ページ46
「え!ほんと!?!?」
驚きを含んだその黄色い声が、渡り廊下に響く
箸で掴んでいた卵焼きがポロッと落ちて、
すぐそばにいた世一先輩に指摘されているのは、廻先輩
『はい!今朝も前みたいに話せましたし、もう大丈夫です。すみません、ご心配おかけしてしまって…』
糸師くんとまたいつもどおりに接することができるようになったことをお昼ご飯中に、先輩達に報告する
「まぁそれはよかったけどよ、…それよりお前、体は大丈夫なのか?」
『え?』
玲王先輩に唐突に投げかけられた質問に、わけがわからず首を傾げる
「いや、だから、お前階段から落ちたんだろ?」
その言葉に私は目を見開く
それもそのはず。先輩達に話したのは糸師くんと和解したことだけ
階段から落ちたことなんて一度も話していないのだ
『え、…あぁ、はい。そちらも大丈夫です。でも、なんで玲王先輩、その事知ってるんですか??』
すると、玲王先輩とその隣にいた凪先輩が私から目線を変えて、ある人物へと私の意識を誘導させる
「あぁ、俺が言ったんだ。あんまりよくなかったか??」
そう言ったのは世一先輩
『世一先輩が?』
「あぁ、俺と蜂楽がたまたま見かけてさ。つっても、俺らが見たのは意識のないAを凛が助けてるとこしかみてないけどな!」
近くにいた子に状況聞いただけ、と付け足す
『そうだったんですか!すみません…ご心配おかけしてしまって…』
「いいのいいの!Aちゃんに大きな怪我がなくてよかったよ♪」
「そーいえばA、それ。やっぱりその時壊れたのか?」
玲王先輩が、私の顔を指差してくる
『あぁ、そうなんです。眼鏡はフレームごと壊れてしまって……残念ながら買い直しです。その間は、この予備の眼鏡で凌ぐつもりです』
家でしかかけ慣れない眼鏡に指を添えると、苦笑いをせざるを得ない
「ふーん、どうせならコンタクトにすればいいのに…」
『コンタクトですか…なかなか勇気がなくて…。目に指入れるの…怖いんですよね』
凪先輩の提案に、肩を落として答える
「前も言ったけど、そのほうがもっとかわいいよ」
凪先輩が言った
"もっとかわいい"
その言葉が妙に胸の中にひっかかる
このひっかかりの正体は何なんだろう
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作者名:あれん | 作成日時:2023年7月17日 23時