切り捨てる ページ43
病院をでたあと、夕暮れ時の光が私達二人を照らす
私達の影には少し距離があり、今の心の距離を物理的に表されているようだった
結局、メガネは破損
フレームごと見事に壊れてしまったようで、流石に今回ばかりは買い直さなければならないようだった
少し前を歩く糸師くんの背中を見つめていると、ちょっと前のことを思い出す
この間までは少し仲良く慣れたと思ってたのに…
糸師くんのこと…わかんないよ
「お前…」
前方から急にかけられた言葉に、ハッとする
糸師くんは前を向いたままのようだ
黙ってその言葉に耳を傾ける
「俺のこと避けてんだろ…」
予想外の言葉に、息を呑む
心臓が焦りで音を立て始める
「急いでるとかほざいたり…明らか俺と話そうとしねぇ…」
そうだよ…避けてるよ…
事実を並べられて、押し黙る
「今更、席変えたりして距離取りやがって…」
そうでしょ…だって私そうでもしないと無理なんだよ…
もう糸師くんにこれ以上嫌な奴って思われたくないんだよ…
なのに⸺
私の行動とはうってかわって、糸師くんは私を助けたり…わざわざ病院に様子を見に来たり…
こうして送ってったりする…
「はぁ……そーいうの
うぜぇんだよ…」
なんで…
『…んで…』
「あ…?」
やめて…
『うざいならなんで構ったりするの…』
もう私を壊さないで
『私のことなんて…ほっといてよっ…』
うざいんでしょ…なんともおもってないんでしょ
『迷惑なんでしょ…興味も何もないならっ…もう私を一人にしてっ…』
雪崩のように出てくる私の言葉を珍しいと思ったのだろう
糸師くんの背中はピタリと止まり、こちらを振り向いた
だめだ…だめ………泣くなっ…
思いとは反して、滝のように溢れてくる涙
それを必死に拭いながらも、言葉は止まることを知らない
あぁ、限界なんだ…
「おい…」
『もう…やめて。苦しい……辛いの。勝手なことだってわかってるけど
もうこれ以上期待させるのはやめてっ
優しくなんて………しないでっ…』
感情に任せて出てしまった言葉
けれど最後は、絞り出すような⸺
懇願するようなそんな思いが溢れた
これで糸師くんとの縁も終わる⸺
これで、…よかったんだ
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作者名:あれん | 作成日時:2023年7月17日 23時