ある出来事 ページ40
「桜江〜」
そしてこんな生活にも慣れ始めてきた頃
その出来事は訪れる
放課後、ホームルームを終えた私はそのまま帰路につこうと階段を一人下っていた
すると最近は気にすることもなかった同じクラスの女子生徒2人が急に声をかけてくる
踊り場に立ち止まった私の隣に、二人も並ぶ
『えっと…なにか……?』
「んー、別に用はないけどさ」
「最近あんなにひっついてた糸師くんと話すとこ見ないなーって思ってさー♪なに、喧嘩でもしたわけー?」
怪しく笑う二人
この生活にも慣れてきたんだから、やめて…
お願いだから掘り返さないで…
『喧嘩なんてしてないです…』
そう、喧嘩はしてない。それは事実
下を向いてポツリという私をみてなのか、面白いものを見るように二人はのぞき込んでくる
「ほんとー?ってかさ…もしかして、調子乗ってつきまとってたから、うざがられて捨てられたんじゃないのー?」
「えー、かわいそー!」
やめて…
あながち否定ができきれない私にも無性に腹が立つ
否定なんてできっこない
本当に迷惑がられてたんだから…
『もういいですか…それじゃ』
とにかくこの場から一刻も早く立ち去りたいと思い、二人をおいて階段を降り始める
すると舌打ちともに急に引き止められる体
腕を捕まれ自由が聞かない
「ちょっと待ちなって。まだ話は終わってないんだよ」
『や、やめてっ…離してください』
なんとか振りほどこうとする私に、もう一人の子も乱暴に掴んでくる
このままでは何をされるかわかんないし、何を聞かれるかもわからない
もう私には構わないでほしい
糸師くんとのことについて聞かないでほしい
離してほしい私と、絶対に離さない彼女たち
「もうっ!!いい加減にしなって!!」
そして⸺
私は何も考えられなくなる
今自分が置かれている状況も考えようとすればすぐに消えていく
しびれを切らした一人が、急に掴むのをやめて、私の腕を振り払った
すると、その勢いでもう一人の子の掴む力もスッと抜けた
どうやら宙に投げ出された私は、そのまま階段を転がり落ちて、やがてその体は階段下で止まる
じわじわとあとからくる体の痛み
薄れゆく意識のなか、誰かの声だけは脳裏で響いていた気がした⸺
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作者名:あれん | 作成日時:2023年7月17日 23時