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靴箱 ページ35

荷物を回収した私


一体どんな顔で先輩方と話したらいいのか

そんなことを考えながら、小走りで靴箱へと向かう








そして自分のクラスの靴箱への角を曲がると、そこには今一番会いたくない人







靴箱からちょうど靴を取り出した糸師くんが、こちらを見る




『っ…』






今朝まではあんなに求めていた視線も、今となっては全く欲しくない




一瞬目が合うも、自分から視線をそらす
それもそうだろう、今の私には精神的にもちそうにない






とにかくここは穏便にすませて、すぐに外に出よう
それだけ






自分の靴箱に手を伸ばし、靴を手に取る
痛いほどに上から刺さる視線


私と糸師くんの靴箱は縦一段挟んで隣通し
名字が五十音順で、偶然にも近いこの運命を今は喜びきれない











「おい」










突然思いもしない降ってきた声に体が固まる









どうしよう…


なんて言えばいいの…













返事を躊躇して靴箱の中を見たままの自分に、再び声が降ってくる













「おい……。お前…」







『す、すみませんっ!!私、急いでて…』





靴を持つ手が震える
靴箱一つ分しか間がない、この近さに心臓がバクバクと音を立てる




咄嗟に出てきた言葉
なんとかこの状況を抜け出さなければと、急いで靴を地面に出し、靴を履く




なるべく糸師くんの顔を見ないように…



感情を出さないように…











「………は?おい、待て⸺」


「Aちゃん!!こっちこっち!!」


糸師くんの言葉を遮り、外の方から聞こえてくる元気な声


そちらを見ると、蜂楽先輩が手を降っていて、周りには潔先輩や先ほどの先輩方がいた





思わぬ助け舟に、内心ホッとして
外をみて立ち尽くす糸師くんの横を小走りで通り抜けた











「A…遅い。」


私を見下ろす凪先輩
その背丈に、少し驚いた
お昼のときは座っていたから感じなかったのだろう
少し迫力がある



『す、すみませんっ』



「ほいじゃ、Aちゃんも来たことだし、行きますか!!」




ニッと笑った蜂楽先輩を始めに、先輩たちがずらずらと歩き始める












靴箱を振り返ることができない私には、その後ろを黙ってついていくしかなかった

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作者名:あれん | 作成日時:2023年7月17日 23時

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