遠い存在 ページ33
その後の午後の授業
私は当然のことであるがやる気も起きず
そして何よりも隣の席の糸師くんに合わせる顔がなくて体調が悪いと言って保健室へとこもっていた
ベッドの布団が暖かい
なのに心はなんだか寂しくて冷たい
暖かいものに包まれているはずなのに…
目を瞑れば脳裏にははっきりと浮かぶ糸師くんの冷たい眼差し
⸺俺はそいつのことなんて、なんとも思ってねぇ…
⸺興味ねぇんだよ…
じわりと浮かぶ涙
私…自惚れてたのかな
少しでも糸師くんと仲良くなれたって思ってた
近づけたと思ってた
糸師くんのいいとこもいっぱいわかるようになって、学校に来るのが楽しかった
なのに⸺
「迷惑…かぁ。………そうだよね、私なんかが」
世界線の違う自分と、糸師くん
そこを並べてみたところから間違っていたのだと気づく
初めて…だったのにな
こんな気持ちになるの⸺
そこではっきりと気づく
"で、Aは凛が好きなのか?"
私…好きだったんだ
糸師くんのこと。
こんなに苦しいのは、好きだから
こんなにショックを受けているのは、好きな人に言われたから
こんなに地味な私が…
糸師くんのこと好きになんてなっちゃだめだったんだね
「桜江さん、大丈夫??」
優しい先生の声が、布団の中で震える私を包み込む
今の私は、その言葉に返事ができないほど涙で汚れている
唇を噛みしめるのに必死で声が発せない
どうか⸺
どうか私が眠りに落ちているのだと…
本当に体調が悪いんだと…
今はそう思ってください…
そう考えているうちに、本当に私はそのまま眠りの世界へと沈んでいった
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作者名:あれん | 作成日時:2023年7月17日 23時