破壊 ページ32
その瞳に見据えられれば、体が硬直してしまう
糸師くん…本当に機嫌が悪いのかも…。
そしてその冷ややかな唇は、
ゆっくり
そして残酷にも開かれてしまった
「…勝手なことぬかすんじゃねぇよ。
迷惑なんだよ
何を根拠にそんなこと言えんのかしらねぇが
俺はそいつのことなんて⸺」
その後の糸師くんの言葉を聞いて先程までの楽観的な考えは消し飛んだ
唇が震える
言葉なんかでてこない
私⸺
「おい凛!!」
何事もなかったかのように去っていく糸師くん
その後を少し怒ったような潔先輩が追いかけていったようだ
唖然としてすぐそばの地面を見下ろす
「A…?大丈夫か」
無意識にだろう
國神先輩のその暖かい声が染みていく
「気にすんなよ。あいつ、あーいうやつだから」
隣から御影先輩が声をかけてくれる
それから私の頭に置かれた手
私の気持ちを察してのことなのか、
それがわしゃわしゃと無造作に動かされる
これは御影先輩のものではない
「…よしよし」
凪先輩だ。
こういう時って、逆に優しくされると精神的に追い詰められるような感じに陥る
私だけかもしれないけれど
顔を上げると、こちらを心配そうに見守る先輩たち
『あはは、糸師くんらしいですよね。すみません、心配かけてしまって。私は大丈夫なのでっ』
「Aちゃん…」
すみません、蜂楽先輩…
せっかく誘っていただいて…楽しくさせようとしてくれて
『私、お昼も食べ終えたので、戻りますね!皆さんありがとうございました!また、機会があればご一緒させてください』
立ち上がり一礼する
そんな私にかける言葉がなかったのか
空気を読んでのことなのか
誰一人止めはしなかった
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作者名:あれん | 作成日時:2023年7月17日 23時