心情 ページ31
何人ものサッカー部の面々が珍しげなものを見るように、こちらを一斉に凝視する
すべての視線の的となった私は、固まったまま動けずにいると
「A、ほら、こっち座れって」
潔先輩が床に座り込み、自分の隣をポンポンと叩いてくれている
その横でニコニコと可愛らしい笑顔を浮かべる蜂楽先輩
その二人の姿を見れば安心して、潔先輩の隣へと座り込む
『ありがとう…ございますっ』
この知らない人が多い、しかも先輩たちばかりの中、私は体を強張らせながらお弁当を食べることになった
⸺かと思われたが、実はそうでもなかった。
「へぇー、じゃあ凛ちゃん意外と女の子に優しいんだ♪」
「なんか意外だなー。自分に関係なければ構わなそうなタイプだと思ってたけど」
蜂楽先輩が糸師くんについて色々話題をふってくれたり、他の先輩方もフレンドリーな方が多かったおかげで思いの外、打ち解けた空間が出来上がっていた
「で、Aは凛が好きなのか?」
話で盛り上がる中、その堂々とした声にその場が静まる
「ばか、國神っ!そんなことこんな場所で女の子に聞くなって!」
「あ、わりぃ。まずかったか?」
潔先輩の指摘に焦ったような國神先輩を、周りの先輩たちも小馬鹿にするようにまたざわめき出す
"凛が好きなのか?"
國神先輩の言葉が頭に残る
私は⸺
「あ……ご本人登場ー?」
凪先輩のその言葉に、一斉にみんなが渡り廊下の入り口を見る
するとタイムリーなことに、糸師くんがこっちを怪訝そうな顔で見ていた
今朝からちゃんと話していない糸師くん
そんな彼と、今日初めて目があった気がした
ただ、それもすぐにそらされてしまう
「あ、凛ちゃんも一緒に食べるー?今日はAちゃんもいるんだよ♪」
「うぜぇ、食わねー」
そう言うと、負のオーラをまとった彼は、私達の間を抜けて部室の方へと行ってしまいそうになる
「機嫌悪ー」
「なんだ?もしかしてAが俺らといるから不機嫌にでもなってんのかー?」
機嫌悪い?糸師くんが?
いつもとそこまで変わらないようにも見えたけど…
凪先輩はそれを察しとったようで声に出すと、それにあわせて御影先輩も発する
するとピタリと動きを止めた糸師くん
少しだけこちらを見れば、冷ややかな瞳が私達を見据える
25人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あれん | 作成日時:2023年7月17日 23時