不器用な彼 ページ27
『糸師くんっ、…』
部活が終わり、部室に1人戻って行こうとする糸師くんに声をかける
タオルで汗を拭う彼は、静かにこっちを向く
『ぁ、えっと…お疲れ様っ…。糸師くん、サッカー上手なんだねっ。私サッカー全然わからないけど…私でも分かるくらいすごく上手だったっ』
真っ直ぐに彼を見て言う
すると彼はフイとそっぽを向いてしまった
私、なにか気の触ること言っちゃったかな…
自分の発言に悪いところはなかったかと、うつむいて考える
「まったく凛ちゃんは素直じゃないねぇ♪照れてそっぽ向くくらいなら、ちゃんと嬉しがればいいのに♪」
「あ"ぁ??」
突然現れた蜂楽先輩
ニヤニヤしながら糸師くんの背中を肘で小突く
糸師くんが…照れてる…???
彼の表情からは私には読み取れない
「大丈夫だよ、Aちゃん♪凛ちゃんは別に怒ってるわけじゃないから♪ちょーっと素直じゃないから勘違いさせちゃうだけだからねっ」
私の方を見てはニコニコと笑う先輩
そっか…、そうだった
糸師くんは不器用なとこだらけ
私にはまだまだわからない糸師くんの表情があるんだ⸺
もっと⸺知りたいな…
日も暮れてきて、あたりも暗くなってきた頃
私は今、校門の前で立ち尽くしている
その間にも、考えるのは糸師くんのこと
「いくぞ…」
すると突然声をかけられた
今私の頭の中にいた人物に
『ぁ、うん。ありがとう、糸師くん』
そして家までの帰り道を歩き出す
なぜ一緒に帰り道を歩いているのか
わたしもまさかこんなことになるとは思わなくて、心臓がうるさい
こうなった理由は蜂楽先輩にある
⸺じゃあ、お疲れ様でした。失礼します
⸺ぇ、まさかこんな夕方に1人で帰るつもり?女の子が1人で危ないよ??
⸺いえ!私は大丈夫ですからっ…
⸺ダメダメ!!男として失格だよ!
んー、あ…そうだ!!凛ちゃん!!Aちゃんのこと、送ってってあげて♪
⸺あ??
あのあと、血管を浮き出させた糸師くんだったけど
結局はなんだかんだ行って、送ってくれることになった
そして今に至る
隣を見ると糸師くん
前にも1回送ってくれたことがあるけど、あのときは眼鏡も壊れていたし、それどころではなかった
実質、初めて一緒に帰るという実感が湧く
こんな近くにいると、胸の音が聞こえてしまいそう…
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作者名:あれん | 作成日時:2023年7月17日 23時