もっと… ページ21
黒板に打ち付けるチョークの音
先生だけがこの教室で口を開いている
そんな授業中
いつもだったら私は真剣に授業を受けているはずだった
けど今日は違う。
隣の彼が気になって仕方がない
形はどうといえど
糸師くんの不器用ながらも笑った顔を初めて見てから、気になって気になって仕方がないのだ
そんな彼はというと、頬杖をついたままつまらなそうに授業を聞いているようだ
糸師くんの横顔⸺
きれいに通った鼻筋
女子顔負けの長いまつ毛
どこから見ても美男子という言葉が似合う
男の子に興味をもつことなんて今まで一度もなかったのに、今の私はすごく惹かれている…
隣の席でよかった…
「おい」
急に話しかけられてハッとする
恐る恐る彼の方を見ると、気づけば糸師くんは顔をしかめてこちらを見ていた
その表情でさえ様になってしまうのだから、ずるい
『ぁ、えっと……なんでしょう…』
「"なんでしょう"じゃねーんだよ。人の顔見て気持ちわりぃ顔しやがって」
『えっ！？』
そんなに顔に出ていただろうか。
そう思い、慌てて顔を両手で隠す
張本人に指摘されてきっと今の私は顔が赤いだろう
恥ずかしすぎる…
それからというもの、授業のたびにはわかっていながらも糸師くんのことが気になってつい盗み見てしまう
そしてまた糸師くんに指摘される、という繰り返し
こんなことの繰り返しだけど、
糸師くんと関われることができて嬉しい
話せるのが嬉しい
糸師くんにとってはただの迷惑なのかもしれないけど、
辛口な言葉でも、それは本当に怒っているわけではないと⸺
隣で関わるうちに糸師くんのことが前よりもっとわかるようになってきた
他の男の子とは違う。
不器用で、そっけなくも見える
確かに口も悪いし、キツイこともいうけど
でも、それでもその中には優しさもちゃんとある
ねぇ、糸師くんのこと
もっと知りたい⸺
もっと教えてほしい⸺
そう思ってしまうのは
わがままかな。
欲張りかな。
糸師くんのこと、もっともっと視てもいい？
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作者名：あれん | 作成日時：2023年7月17日 23時
