変われた ページ20
「糸師くん!おはよー!」
違う。私の前と態度が。
「昨日、桜江午後にいなかったでしょ?だからあたしら心配して⸺」
「邪魔だっつってんだろ…どけ」
糸師くんに媚びを売るようにかけられた言葉が、その冷たい声で遮られる
「ごめん糸師くん!!ほら、桜江、邪魔だからこっちきなって。」
私の腕を引いて、道を開ける2人
その横を通り教室の中に入る糸師くん
その背中を眺めていると、立ち止まってこちらを振り返る
「はやく来い」
『えっ…あ、はいっ…』
そんな糸師くんの言葉で、中に入ろうとする私の腕をぎゅっと掴み直される
「桜江!!まだ話おわってな⸺」
「…うるせーな。誰もお前らに用なんてねーだろ」
鋭い視線で彼女たちを見る糸師くん
するとそのおかげか、私を掴んでいた腕は簡単に緩み、解放された
『糸師くんっ………。あの、…。』
黙って席につく糸師くんのあとを追いかけて、自分の席につく
無言でこちらの様子を見る彼
『…ありが…とう。助けてくれて…』
頬杖をついて窓の外へと目を向けてしまう彼
伝わっただろうか…
「今日ははっきり言ったんだろ…」
『ぇ…?』
「俺は何もしてねぇ」
"今日は"⸺って。
今までのこと、糸師くん知ってたんだ⸺。
私が断れなかったこととか…言いなりになってたこと…。
『でもっ…糸師くんが来てくれなかったら⸺』
「俺はあいつらが邪魔だったから、邪魔だって言っただけだ…」
その言葉に、不器用なりに優しさを感じる
私の頑張りをわかってくれてる。認めてくれてる。
『うんっ…。そうだねっ…。ありがとう』
自然に笑顔になる私は、顔を背けたままの彼の視線とだけ目が合う
『それと、昨日も、ありがとう。助かりました。これ』
そして鞄の中にしまわれた彼の服を手に取り、目の前の彼に差し出す
『洗濯…してあるから、安心して。ありがとね』
差し出されたそれを手に取る彼は、呆れたように私のことを見る
「安心って…なにがだよ」
『ぇ、えーと。…なんだろ。わかんないや…ごめんねっ』
自分でも説明のつかないことを言ってしまい、苦笑いして答える
初めてだった⸺
私のことを見て、
彼が馬鹿にしたようにか
それともおかしかったのか⸺
うっすらと笑みを浮かべたのは
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作者名:あれん | 作成日時:2023年7月17日 23時