レンズ越しの景色【糸師凛】 (ページ17)

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暖かいページ17

しばらくして、彼は私をおいて何やらどこかの部屋に入っていったようだ

ここがどこかなんて、私には全く検討がつかないのだけれど…

「おい…」

『は、はいっ』

その声に振り向くと、私の頭に何かが乱暴に投げられる
かぶさったものを手に取り、広げるとそれは服のようだった

サラサラとした生地、けれど薄すぎずといった触り心地⸺ジャージ？

『あの…糸師くん…これは…』

「見て分かんねーのか。着とけ。風邪でもひかれたらうつるだろーが」

まぁ…見えないんだけれども…

でもこれは間違いなくジャージのようだ
ということはここは………おそらくサッカー部の部室

『これ…糸師くんの？悪いよっ…』

「だからなんだ…。つべこべ言うな」

『でもっ…』

4度目のため息。この短時間で4回である。
相当呆れていることであろう

「早くしろ…」

威圧のある声。私はその声に従うしかなく、急いでその糸師くんのジャージに手を通す。
自分のものとは違うサイズに袖が余る

私が袖を通したのと同時に、また彼が腕を掴み歩いていく

私はただ、それについていくだけ

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車の通る音
歩行信号の音
数々の音が聞こえるようになったとき、ようやく私は⸺
私達は学校外に出たことに気づいた

『糸師くん…？あの…まだ午後の授業が…』

「どっちだ…」

『……え？どっちって…』

「お前の家だ…バカ」

私の家？
まさかとは思うけど糸師くん、もしかして家に送ろうとしてくれてる？

『糸師くん…あの…なんでわかったの？午後の授業休むって…』

「……あ？お前のことだ、どうせその役に立たねぇ飾り物の目じゃ授業休むしかねぇだろ…」

『でも…、糸師くんは午後の授業が⸺』

「別に…そんなのどうとでもなる…。間違いなくお前ほどバカじゃない。人の心配してる暇あるなら自分のこと考えろ」

口調こそ雑ではあるけど、そこには彼の暖かさを間違いなく感じる。
全く見えないのに、そんな暖かさがみえるって不思議な気持ち…

糸師くんの言葉とは裏腹な優しさ
糸師くんのジャージの暖かさ

今はただ胸が熱くなるのを感じるだけ