見知った声 ページ15
正直、あながち私の勘は間違っていないとは思う
けれどやはり慣れない視界での行動はなんととも自信がない
それからしばらく歩いただろうか⸺
今どのあたりまで来たのだろうか⸺
こんな時、普通に友達が生徒としていたのならどんなに良かっただろうか
気軽に"助けてほしい"と、言えたのだろう
すると私の肩に何かが当たった
固くて、しかも私の肩にあたるくらいのものだ⸺
相当高さもあるものに違いない
ただ、それが当たっただけなら良かった。普段の私なら。
こんなぼやけた視界の中、いきなりそんなものが肩に当たるなんて思いもしなかった。
そのせいで、体がよろめき足元がおぼつかない
よろよろとする私。しかしその私の腕を、何かが掴んで、よろめく体を引き止める
『……っ。危なかった……』
体が倒れそうになる状況なのに、わたしは思ったよりも冷静だった。それよりか、腕をいきなり掴まれたことに対してのほうが私を驚かせた。
「なにやってんだ…お前」
私の上から、呆れたような低い声が聞こえた。
その声は最近になってよく聞くようになった声
これは⸺
『糸師くん??』
声の主へと顔を上げると、やはりぼやぼやして何も見えないけれど、いつも見る彼の身長くらいのシルエットだけは捉えることができた
返事は返ってこない
彼はどんな表情をしているのか。
何を考えているのか。
どこを見ているのか。
いや、もしくは人違いだったのか?
なんて考えていると今度はため息が聞こえた
「………お前の上だけにでも雨でも降ったのか…?随分土砂降りだったんだな」
『え、あ、いやこれは⸺』
先程のことを正直に言ってもいいものかと俯く。考え込んでいると、腕の中の猫が一鳴きした
まるで私の背中を押してくれるように
『嫌がってるこの子を助けたかっただけなの…』
それから腕の中の、ふわふわとした存在を撫でながら糸師くんに先程の出来事を話し始める
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作者名:あれん | 作成日時:2023年7月17日 23時