客人 ページ12
ある日の昼休み⸺
私はいつものようにあの猫ちゃんのもとにやってきていた
私の足元に擦り寄る姿は、とても無防備で可愛くて、心が本当に癒やされる
『最近ね、糸師くん、何かあると私のこと"バカ女"って呼んでくるんだ』
猫相手に自分の学校生活のことを話す
糸師くんに助けられたあの日から、糸師くんのことを考えることが増えた
私のことを"バカ女"と言い捨てたり、
声をかけるときにも"バカ女"と呼ばれたり
普通なら罵倒されてるようで変な気しかしないのかもしれない
けれど、私にとってはこの"バカ女"と呼ばれること⸺
これがとても大きな意味あいをもつ
今までまったくの他人でしかなかった彼に、自分のことを認識してもらえてる
それだけで、とても嬉しいことに感じるのだ
『なんか…嬉しいな…』
猫の頭を撫でながら、糸師くんのことを考える
思えば偶然とは言えども、何回も助けてくれた。自分が大変な状況でも、別に放っておいてくれても私は構わない。今までもそうだったのだから
それを、ブツブツと1つや2つ吐き散らしても助けてくれた
いつしかそんな彼に少しずつ惹かれているのだと⸺
自覚し始めたのはごく最近
「あ、いたいた。さーえっ!」
この幸せな空間を、私の苦手な声が無理やり踏み込んでくる
いつもは2人でいる彼女らも、今日は何故か1人
しかもこんなお昼休みに自分の時間を割いてまで、私を探していたということになる
『あ、えっと………なんか用?』
「んー、用っていうか、ちょっと私も猫触りたくて!いつもここで猫、触ってるでしょ??」
驚いた。私をいいようにしか使わないと思っていたこの子が、私のお昼休みの過ごし方を知っているなんて。
『ぇ、あ、そうなんだ…でも、この子たぶんあんまり懐いたりしなくて…』
「えー??そうー??すぐなつくっしょ?ダイジョブダイジョブ!!」
私に擦り寄っていたところを、無理やり抱きかかえるその子
すると彼女の腕の中で、逃れようと暴れだす
『ぁ、嫌がってるから…』
「もう!じっとしてって!私も遊んであげるのにさー」
私の声なんて無視して、暴れるその子をなんとか押さえ込もうとする
嫌がって嫌がって⸺
鳴き出すその子を私は放ってはおけなかった
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作者名:あれん | 作成日時:2023年7月17日 23時