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和泉守兼定『書き換えられた夏の、』 ページ17

季節は夏。
大きな大きな入道雲が青に浮いている。

教室の開け放たれた窓から入る風がカーテンを揺らす。


いつから彼を好きなのかと言われれば、きっかけは全く覚えていなかった。
この恋は知らない間に芽生えていた。



誰にでも優しくて、かっこ良くって、何時も笑ってる。
そんな彼を好きになっていた。


今日の授業も退屈だった。
気晴らしに空でも眺めようと
放課後、私はこの日偶々屋上へ上がった。

ドアを開くと、少し奥の方に彼が立っていた。
1人、遠くの空を眺めている。

これは神様がくれたチャンスだと、そう思い私は彼に声をかけた。



彼はゆっくりと振り返り此方を見た。


「あの……
来週の日曜日に、花火大会があるんだけど、よかったら、一緒に行けない、かな……?」


私の体温は緊張と期待でどんどん熱を持って、頬が火照る。

首から伝う汗が胸へと流れて気持ち悪い。


ミーン ミーン と蝉の鳴く声と、ガヤガヤと運動部の生徒の声が聞こえる。


彼は此方へ歩み寄り、すれ違う間際、
私の頭に ポン と手を置いて

「楽しみにしてる」

そう笑って言って去っていった。



私は彼の背中が見えなくなるとその場で倒れるように寝転んだ。
床はずっと影がかかっていたのか、熱くなかった。

私はそっと目を瞑った。
コンクリートのひんやりとした温度が、私の火照った体を少しだけ冷ましていく。
プールの塩素の匂いが、風に運ばれてくる。


「…あっつ………」


青い空に白く大きな入道雲が浮いている。
きっと私は、夏が巡ってくる度にこの日の事を思い出してしまうだろう。




夏祭り当日、私と彼は浴衣を着て色々な屋台を巡った。

花火が始まる前に、よく見える場所へ移動しようという彼に付いて行くと、
そこは1つの小さな神社だった。

暫くすると花火はあの独特な音を上げて打ち上がり、パラパラと散っていった。
何度も、何度も。

そして最後の花火が大きく夜空へ打ち上がった。


あぁ、もう終わってしまった
なんて。
"帰ろうか"の一言が言えずに私は黙り込んだ。


彼は
「終わっちまったなー」
なんて言って私に手を差し伸べた。

.→←今剣『そうしてぼくは朽ちたのです』



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さら - ありがとうございます!!全然待ってます!!試験頑張って下さいね!! 寒いのでお体には気を付けて下さい!! (2019年11月6日 21時) (レス) id: 8178d9f7d8 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽美亜(プロフ) - さらさん» コメント、リクエストありがとうございます^_^小説を書く活力になるので嬉しいです!今は試験勉強で忙しいので、落ち着いたら書いていこうと思います。元々私は不定期更新なので、気長に待っていてくださいね! (2019年11月6日 16時) (レス) id: d2d53eedb3 (このIDを非表示/違反報告)
さら - はじめまして!!刀剣乱舞の作品どれも大好きです!!このお話が終わったら、鶯丸さんと、へし切長谷部さんのお話書いてほしいです!! (2019年11月5日 23時) (レス) id: 8178d9f7d8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:赤羽美亜 | 作成日時:2019年9月24日 20時

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