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六頁 ページ7

あの日から2週間程が経ち、歌仙さんは大抵のことは一人で出来る様になっていた。

一人で歩き走れるし、簡単な料理も作れる様になった
そして、一人で寝られる様にもなった。



彼は矢張り自然が好きで、草木が茂るこの空間を大層気に入っている様だ。

時間を見つけては散歩に出かけ、嬉しそうに帰ってくる。


歌仙さんが散歩に行っている間、私は何をするわけでもなく
ただ畳の上に転がって明日が来ない事を願っていた。



この前洗濯物が風に攫われてしまい、少し奥まで足を進めた事があった。


そこで偶然花を愛でる彼に遭遇した。

彼は花弁の色が違うとか、風が運ぶ緑の香りが心地良いとか
そんな小さな事でも楽しんでいる様だった。


胸が騒ついた。
嫌な騒つきだった。

今だから分かるが、多分私は
彼が妬ましかったのだろう。


私は生前沢山苦しんできた。
彼とは違って
今も苦しんでいる。

なのに今笑っているのは彼だ。
私じゃなくて
確かに彼だった。


《何故私じゃないの》


ただその一つの疑問が何年も私を縛り、苦しめ、痛めつけた。

そうして面倒くさい事に、
そう思う自分がいやに汚く感じられて
そんな汚い自分が気持ち悪かった。





優しい人になりたかった。

生前からそう思っていた。


私なんかにも優しかった彼女の様になりたかった。
だからこの後、あんな事を言ってしまったんだ。









ーーーーーーー


僕達は敬語が無くなる程の時間を共に過ごした。

こんのすけが、そろそろ出陣してみてはどうかと言うから
その日僕は初陣を経験する事となった。



初期刀候補以外の刀剣男士は存在しないこの空間では、部隊に僕以外入れる事も出来ない。

普通に戦えば負けは確実だからと、政府は僕達専用の疑似戦場の様なものを用意していた。

そこでの怪我は戦闘が終わると共に治るそうで、主が手入を行う必要がないのだという。

刀の本分は戦う事だと僕は思っている。

必ず勝利を収めてみせようと主に言いゲートをくぐった。





そこは淀んだ空気が漂い、誰のかも分からない鉄の匂いが鼻を掠めるような最悪の場所だった。





ーーーーーーーーー
初陣から戻ってきた歌仙は酷く顔色が悪かった。

ご飯も食べず、お風呂に入ると彼は自室に籠って出てこなかった。



日が落ちて満点の星空が広がる頃、
彼は私の部屋を訪ねて来た。

こんな夜遅くに済まないと言う彼にどうしたのかと尋ねると、
彼は静かに語り始めた。

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設定タグ:とうらぶ , 刀剣乱舞 , 歌仙兼定   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:赤羽美亜 | 作成日時:2018年11月4日 21時

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