秘めごと【歌仙兼定】 (ページ4)

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広間の様な部屋の中心には一振の刀が置かれていた。

「………………まさか、私が顕現させるの?」

「その通りでございます主様。

なに、難しい事は何もありません。
ただ念じるだけで良いのです。

そうするだけで繋がります」

一体何と繋がるというのだろうか。

よく分からないが、とにかく念じれば良いらしいので、
私は刀の前に膝をつくと、祈る様に指を組み
目を瞑った。

なんだか意識がふわふわしている

目を閉じている筈なのに、やけに辺りが白くて
体が暖かな温もりに覆われている。

不思議な感覚だ。

あぁ、そうだ
念じないと

顕現させないと

どうか

どうかこの醜く汚い私の元へ降りてきて下さい

貴方の力が必要なんです

ピンと糸が張る様な感覚が、頭のどこかでした。
きっと、これが“繋がる”という事なのだろう。

そして声が聞こえてきた。

優しそうな、男の人の声が

ーそんなに僕が必要なのかい？ー

えぇ、必要なんです
絶対に

ーそうか、
では仕方ないね
そちらに参るとしようかー

声が途切れた瞬間

空中に桜の蕾の付いた枝が現れ、
花が咲くと同時に
ぶわっと、どこからか風が起こった。

桜の花弁が勢いよく舞う中、
華やかな和服を着た男性が現れた。

「僕は歌仙兼定。
風流を愛する文系名刀さ。
どうぞぉあぁ！？」

「‼」

挨拶をしながらゆっくりと地に降りていった彼は、
足が地面に着くと同時に滑り落ちた。

そういえばこんのすけが、歩く事すら出来ないとはいってたけど。
立つ事も出来なかったのか。

床に転がった本人は一瞬何が起こったのか分からないという様な顔をした後、
全てを理解し、顔を真っ赤にして座っている。

「無事顕現出来たようですね！
では主様、歌仙様のお世話を宜しくお願いしますね！」

では、っと言ってこんのすけは煙と共に消えていった。

この微妙な空気の中去るなんて、
こんのすけは何て気の利かない狐なんだ。

「…………とりあえず、立つ練習からしましょうか」

「あ、あぁ
よろしく頼むよ……」

そこからは何時間にも及ぶスパルタ訓練だった。

重い彼の体を支え続けるのは大変体力と筋力がが必要とされ、
やっと彼が立ち、よちよちだが歩ける様になる頃には私が立てなくなっていた。