安心できる存在1 (紬) ページ2
Aちゃんが、風邪を引いたらしい。
朝からこの世の終わりみたいな顔をして心配していた監督は、あいにく他の劇団の手伝いに行く予定があるらしく、代わりに俺が看病を頼まれた。
監督「紬さんなら安心なので……Aを頼みますね!」
と言われたけど、俺以外じゃ不安だということなのかな。
紬「Aちゃん、入るよ」
部屋をノックすると、「はい」とくぐもった小さな返事が聞こえたのでドアを開ける。
紬「お粥と薬持ってきたんだけど…」
「ありがとうございます、紬さん…」
申し訳なさそうに言ってゆるゆると笑うその顔は、熱のせいで少し赤い。
紬「お昼ご飯、食べられそうかな」
「はい」
頷いて体を起こそうとするAちゃんを止める。
紬「そのままで大丈夫だよ。はい、どうぞ」
スプーンに掬って差し出せば、Aちゃんは赤かった頰をさらに染めた。
「え…と、自分で食べられますよ……?」
紬「今日は監督からAちゃんを頼まれてるんだ。このくらい俺がしなきゃ」
「……すみません。じゃあ、いただきます」
素直に口を開けたAちゃんにお粥をあげると、「……美味しい」と言ってくれた。だけど
「あの、でもやっぱり恥ずかしいので……自分で食べさせてください」
と頼むAちゃんが本当に恥ずかしそうだったので、俺も自分が恥ずかしいことをしていると気付いて今度はスプーンをAちゃんに渡した。
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作者名:iha | 作成日時:2020年1月22日 18時