あなたの隣 (ページ2)

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「俺さ、まじであゆみの文章好きなんだよね。キレイっていうか、整っているっていうか！今ライターを増やそうとしているから、いい人いたら紹介してって伊沢さん、あ、社長ね、って言われたときに真っ先にあゆみが思い浮かんだよね」

こうちゃんの誉め言葉はなかなか嬉しかった。それにさっきの記事に惹かれたのも事実だ。

「本当に楽しいから！」

そう熱弁してくるこうちゃんを見て、こんなに夢中になれるなんて素敵だな、私もやってみたい、そう思えた。

「私も挑戦してみたい！」

そう伝えると彼はガッツポーズをしたのち、1枚の紙を差し出してくる。

「これに名前とか、電話番号とか、必要な情報を書いてほしい。推薦人の枠は俺の名前でいいから。あと文章力をはかるために最近読んだ本の批評文をA4の紙一枚書いて同封してほしい。まあでもあゆみのことだから大丈夫だとは思うけど！書けたら俺に連絡して」

丁寧に一つ一つ必要なことを教えてくれるこうちゃんにお礼を言う。そのあとは、また近況報告で盛り上がった。

こうちゃんに別れを告げ、家に帰る。夜ご飯の準備をしながら、なんの本について書こうか頭を巡らせる。本が決まれば、自然と内容も浮かんでくる。余り物の野菜と肉を炒めている間に構成を考え、食べ終わったらすぐにとりかかった。次の日は３限からだったため、多少の夜更かしは許される、と信じている。あゆみはパソコンを開き、文字を打ち始めた。

「できたよ！」

幼馴染のあゆみから連絡が来たのはカフェで会ってから、二日後のことだった。その早さに思わず苦笑してしまう。昔からあゆみの文章は秀でていた。読書感想文では毎回代表に選ばれ、国語の授業でも先生がべた褒めしていたのを覚えている。

「伊沢さん、俺が紹介したい子のプロフィール、取りにいってきます。」

「こうちゃんが紹介するような人、楽しみ！
あ、今度僕の知り合いのも見せますね」

山本さんがニコニコ笑いながらそういう。早くみんなにあゆみの文章を見せて自慢してやりたい、そう逸る気持ちを抑えられなかったため、急いで彼女の大学まで出向いた。封筒を渡してきたあゆみはいつにもなく自信満々な顔をしている。

「結構自信作！」

あゆみがそういうならよほどうまくかけたのだろう。じゃあ、連絡を待ってて、とこちらも受かる前提で話を進めてしまう。

「ありがとう！認めてもらえるといいな」
絶対大丈夫、俺は強い確信をもってオフィスに戻った。