275:センラside ページ10
傷は痛くないのかなと気になるけど、重ねられた唇を離したくなくてAちゃんから離れるまで気付かないフリをしようと目を閉じた。
Aちゃんが感じた怖さに比べれば比じゃないけど、俺も腕の中に抱くまでは怖かった。
もっと見るに堪えない姿になっていたらどうしてたんやろ。
どんな姿になったって一生傍に居るつもりでいるに決まってる。
それでも。
酷いことをされていて俺まで恐がったらどうしよう。
身体の傷は治せても心の傷はなかなか癒えない。
だから、今重ねられた唇と縋るように自分にかけられた腕に安心した。
背後から聞こえてくる物音やあいつの叫び声は坂田が出ていく時に魔法を掛けてくれたのかAちゃんには聞こえていないらしく、怖がる様子も無い。
「まだ終わってねーぞ」
「はよ立てや」
微かに聞こえてくるうらたんや志麻くんの声が怒りを含んでいて、すぐには終わらせないと言っていた言葉通りあいつの声は絶え絶えにはなっているけど途絶える事は無かった。
俺の意志を汲み取ってくれているらしいみんなの行動は何となく想像出来る。
今までだって何度かそうやって遊び半分で始末した事があった。
もっと苦しめばいい。
そんな痛みや恐怖なんてAちゃんが味わったものの欠片にもならない。
俺の大事な人を泣かせて、傷付けた代償はもっと重くないと。
(お前に価値なんてあらへん)
死んで償ったってまだ足りない程なのに。
俺からAちゃんを奪うというのはそういう事。
もちろん一番許されへんのは大事にしてきたこの子を傷付けた事やけど。
「センラ」
唇を離した合間に小さく呼ばれた名前に俺の事しか考えて欲しくない気持ちと、聞こえていないはずだけどもう怖い思いはさせたくない。
Aちゃんの耳を塞いでキスを深くした。
絡めた舌は相変わらず柔らかくて段々と身体の力が抜けていくAちゃんは可愛かったけど、いつも感じなかった血の味が微かにしていた。
舌で触れればはっきりとわかる傷に苛立ちは蘇ってくる。
今までどれくらい怖い思いをして、どれだけ痛みに耐えたんやろ。
今だって痛いやろうに...。
背中から聞こえるみんなの声は止まない。
坂田や天月くんですらいつもとは違う低くて地を鳴らすような声を出していた。
お願いします、許して下さいという泣き叫ぶ情けない声が何度も聞こえる。
「許すわけねーだろ」
うらたんの声の後に一際大きくなった断末魔が聞こえた。
それがあいつの最期の声だった。
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あーりん(プロフ) - 神楽さん» ありがとうございます( ; _ ; )元の甘々要素に戻したくてふんだんに取り入れていこうとしてます、、、w甘々になってるのか?と自問自答付きですがw (2019年9月21日 2時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
神楽 - 甘々ですな...。最高ですな.........。(語彙力低下中) (2019年9月20日 16時) (レス) id: 007b538a5a (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - 無為さん» コメントありがとうございます!離れてさせていた分これからは暫くは穏やかな2人をお送りできればなーと思っております!更新頑張ります! (2019年9月16日 2時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - 珠菜さん» ありがとうございますー!長いだけのお話なのに一気読みありがとうございます、お疲れ様でした( ; _ ; )これからも楽しんで頂けるように頑張ります! (2019年9月16日 2時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - ゆうさん» 楽しみにして頂けていて嬉しいです( ; _ ; )!ハラハラしてもらうのが目的だったのでゆう様にそう言って頂けて、伝わってるんだなと安心出来ました!w (2019年9月16日 2時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あーりん | 作成日時:2019年8月28日 7時