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「何したい?」
「えーっと、、、」
ソファの下に座る彼は私が何か言うのをわくわくと待っている様子で慌ててしまう。
みんなはご飯を食べるとまた今度来るねと帰っていった。
何がしたかったっけ。
帰りたい一心しかなかった私には、無事に帰って来れたからやりたいことなんて無い。
それは許してくれなさそうな私を見上げる瞳を見つめる。
「センラと一緒にいれればもう充分」
「可愛い」
真顔で間髪入れずに返された言葉に笑うと彼も顔を綻ばせた。
もうこれで充分。
こんな幸せ、他に無い。
「時間はいっぱいあるし、ゆっくり考えたらええよね」
「そうだね」
伸びて来た手はくすぐるように私の頬を撫でた。
見下ろした彼の目が優しくて気持ちまでくすぐったくなってくる。
(キスしたいな)
微笑んで上がっている形のいい唇に目がどうしてもいってしまう。
いつもはキスしたいなと思う時に彼からしてくれていたから、自分の意思でするなんて数える程しかした事が無い。
どうしようとじっと顔を見ながら迷っていると、ん?と首が傾げられる。
「あの、、、」
「なぁに?」
耳に触れる指がくすぐったくて少し身を捩ると指先は首筋に滑り落ちてきて余計にくすぐったい。
それを見て楽しそうに笑う顔を見て、どうしようもない気持ちが溢れてくる。
泣きそうな顔でごめんと何度も謝り続けた彼の面影はもうどこにも無い。
心配そうに見つめる瞳でもない。
ただ、私が笑うのを見て彼も嬉しそうに笑う。
(すき)
口に出すより、自分からしてしまう方が恥ずかしくないかなぁ、と彼の肩に手を置くとソファの下に降りると勘違いした彼の手は身体を支える様に添えられた。
「すき」
「え」
見下ろす形になっている彼の顔は驚いていて、それが楽しくてもう一度自分からキスをすると添えられていた手は背中に回される。
「あぁもう。なにー?可愛いすぎるねんけど」
膝立ちになってより近くなった顔は照れたみたいに笑っていて、そんな彼が珍しくて嬉しくなってしまう。
なかなか視線の合わない彼の瞳。
「俺も。だいすき」
好きやで、と唇が重なる瞬間も囁かれていつもの彼のキスに目を閉じた。
唇が離れてもすぐに重なるキス。
瞳を合わせるとお互い目で笑っているのがわかった。
「もう1000回したかな?」
「何言うてるん。可愛いから1兆回するって言うたやん」
だからまだ足りひんねとまた唇は重なって、結局夕飯の準備をする時間までソファで戯れつき続けた。
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あーりん(プロフ) - 神楽さん» ありがとうございます( ; _ ; )元の甘々要素に戻したくてふんだんに取り入れていこうとしてます、、、w甘々になってるのか?と自問自答付きですがw (2019年9月21日 2時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
神楽 - 甘々ですな...。最高ですな.........。(語彙力低下中) (2019年9月20日 16時) (レス) id: 007b538a5a (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - 無為さん» コメントありがとうございます!離れてさせていた分これからは暫くは穏やかな2人をお送りできればなーと思っております!更新頑張ります! (2019年9月16日 2時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - 珠菜さん» ありがとうございますー!長いだけのお話なのに一気読みありがとうございます、お疲れ様でした( ; _ ; )これからも楽しんで頂けるように頑張ります! (2019年9月16日 2時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - ゆうさん» 楽しみにして頂けていて嬉しいです( ; _ ; )!ハラハラしてもらうのが目的だったのでゆう様にそう言って頂けて、伝わってるんだなと安心出来ました!w (2019年9月16日 2時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あーりん | 作成日時:2019年8月28日 7時