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「さかたんかと思っちゃった」
ふふ、と笑うと彼はあいつにそんな真似はさせないと少し不貞腐れてしまった。
「本物?凄いね?」
「まだ疑ってるん?」
どうしようか、と眉を下げていた彼が少し屈んで耳元に唇を寄せてこそこそと内緒話のように囁かれた。
(いつものキスしたら俺って信じてくれる?)
「、、っばかじゃないの!やだ!」
「ふは!冗談やんかー。疑うからやで」
ごめんね、と頭に手を置かれ家じゃない所で彼を見るのが初めてな上にここ外だった、と照れ隠しもあって先に歩き始める。
「待ってよ、一緒に帰ろう」
ほら、とすぐに追い付いた彼は車道側に来て私の手を握った。
「顔赤いけど結構飲んだん?歩ける?」
「大丈夫。酔っ払っちゃったけどセンラの顔見てびっくりしたらさめた気がする」
そうかなぁ?と顔を覗き込まれてどきりと胸が鳴る。
さっきは驚いて平常心ではいられなかったけど改めて隣で歩くスーツの彼を盗み見るとかっこよくてまた平常心でいられなくなってきた。
細身で身長の高い彼はきちんと着こなしていて視界に入るスーツ姿の男性の誰よりもかっこいい。
「似合ってるね、スーツ」
「あぁ、これ?坂田が変えてくれてん」
周りに聞こえないよう声のトーンを落として来てくれた経緯を話してくれた。
最初は三人のうちのじゃんけんに勝った人が迎えに行くという話だったらしいけど飲み会の様子をこっそり三人とも見に来ていたらしい。
私は接待に必死で気付かなかったけど、その様子を見てやっぱりセンラが行ってあげた方がいいと思うと言い出した。
さかたんの魔法で彼の服をスーツに変え、私の使っていない鞄がこの鞄に変えられていると彼は見せてくれた。
姿を見せるのが問題で、さかたんに出来ないわけじゃないけど体力に限界が来るらしく90分という約束で今妖力を借りてここに来れていると手の甲に書かれた魔法陣を私の前にかざした。
「これ他の人に見えてる?」
「見えない」
だから大丈夫、とまた手を握って歩き始める。
「さかたんにお礼しないとね」
「ほんまや。坂田に初めて感謝するかも」
そういえばあいつは話せなくなってた時も助けてくれたっけ、と彼は思い出したように笑った。
「遅くなっちゃったけど、迎えに来てくれてありがとう」
「どういたしまして」
顔を上げると彼は優しく笑っていて、家だったらキスしてもらえたのになと思ってしまった辺り、やっぱりまだ酔っているのかもしれない。
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あーりん(プロフ) - lonleyさん» コメントありがとうございます!やっと書き始める事ができたのでのんびりにはなると思いますが読んで頂けると嬉しいです★ (2019年7月11日 23時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - ふらわぁさん» 気味悪さを表現したかったので、最高の褒め言葉ですwありがとうございます!笑 (2019年7月11日 23時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
lonley - すごくおもしろかったです! 坂田くんver.気になって仕方ありません!! これからも頑張ってください! 応援してます! (2019年7月10日 21時) (レス) id: 39388112b7 (このIDを非表示/違反報告)
ふらわぁ(プロフ) - おかえりってところでゾクってしましたw (2019年7月10日 20時) (レス) id: c190ba3ed4 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - もえかさん» コメントありがとうございます!どちらも読んで頂けて嬉しいです( ;__; )今後もよろしくお願いします! (2019年7月7日 16時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あーりん | 作成日時:2019年6月19日 6時