希望の光〜病系短編集〜 part14

. ページ30

【京本】




最近、樹は個人での仕事が忙しいらしく、あまり俺らと顔合わせる機会がなかった。





あのジェシーと俺との三人での仕事以降、樹と会うのは二週間ぶり。





YouTubeの撮影も溜め撮りしていたし、他のメンバーも樹と会うのは久しぶりみたい。





今日は特番の音楽番組で俺ら六人で出演させていただくことになっている。





六人揃って新曲を披露するのも何かと久しぶりだから、ちょっと楽しみ。





マネージャーにテレビ局まで送ってもらって六人で楽屋に行こうとしたんだけど、テレビ局の入口で樹が立ち止まった。





京本「樹、どうしたの？」





樹「．．．.ごめん。やっぱもう無理。」





俯いたまま、樹はそう小さく呟いた。





慎太郎「え？どうしたの？」





高地「あっ、ちょっ、樹！」





樹は俺らの声も聞かず、今来た道を引き返すように走ってテレビ局から出て行ってしまった。





俺らは状況が掴めなくて、呆然としていて。





樹のあんなに弱々しい声を久しぶりに聞いた気がする。





ジェシーを筆頭に俺らも樹を探そうと来た道を戻ってみるけど、樹の姿は見つからなくて。





マネージャーに伝えると『生放送だから、これだけ出演したらすぐに田中さんを探しに行きましょう。』と言われた。





不安に駆られながらも俺らは五人で番組に出演することになってしまった。

.→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す