無くしたときに。2 ページ2
.
「真選組に用事があるから、行ってくるね」
「おー、.......行ってら」
前までは必死に止めて一緒に行ってくれたくせに。万事屋の玄関を閉める。銀時に見られていないとなると、今までの感情が爆発して溢れてきた。
「ひっ、うぅ、...ばか銀時っ、...愛してるのに」
端から見ればただのメンヘラだ。それが嫌だった。とても苦しかった。 屯所近くまで来ると、私のことを知っている真選組の方々が私を心配する。
「A...?っ、どうした!?誰に泣かされた...!?」
私の前には、土方さんが現れた。土方さんは泣きわめく私を見ると、血相を変えて心配してくれた。私は安心してしまい、もっと涙がこぼれた。
「ひっ、土方っ、さぁん...ひっぐ...」
土方さんは私を抱き締めると、頭を撫でて背中を擦った。「どうした」「ゆっくりで良いから喋れ」土方さんから溢れる言葉の数々は私の心を慰めた。
最も安心したのは、「俺はお前の味方だ」という言葉だった。
私はことの経緯を話した。土方さんは頭を撫でながら聞いていてくれて、付き合いたての頃の銀時を思い出した。
「そうか。...なァ、別れろよ、とにかく。そんなやつより、俺がAを幸せにしてやる」
ぶっきらぼうに思いを伝えてくる土方さんに、どきり、と心臓が鳴った。取り敢えず土方さんの告白は保留した。私は万事屋に帰りたくないので、屯所に匿っていただけることになった。
私は、万事屋に荷物をまとめに行った。ガラ、と玄関を開ける。
「お帰り。遅かったな」
呑気にジャンプを読んでいる銀時を横目に準備を始めた。キャリーバッグに服や、歯ブラシなどを全部詰め、私が生活していたもの全てを万事屋から消し去る。
さすがの銀時も焦ったのか、「おい、Aっ...?」と声をかけた。Aって呼んだのいつぶりなの。名前もロクに呼んでくれなかったくせに。私は無視をして玄関へ向かった。
「おいっ、待てよ...Aっ!」
腕を掴まれ、振り返る。そこには、行くな、と懇願するような、すがりつくような顔をした銀時がいた。銀時の瞳には薄い膜が張っていた。
「どこ行くんだよ、荷物まとめて。お前の家はここだろ?」
不器用に行くな、と伝える銀時。私は腕を振りほどくと、走って万事屋から出た。
外は雨が降っていた。
.
7人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:す | 作成日時:2021年4月9日 16時