FABRICATION 【Ryosuke.Y】 (ページ33)

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山田くんが私の手を握り、
引っ張り上げる。

「とりあえず出るぞ」

「あ ..... 」

暖かい手。

なんでだろう。

凄く、落ち着く。

「山田くん、」

「.....」

山田くんは振り返らずに、
前を見たまま。

「ありがとう」

ぽつん、と。

小さな声でお礼を言う。

やっぱり振り返ってはくれないけれど
握られた手に僅かに力が入った。

....ずるいなぁ、この人。

外に出ると賑やかな廊下に出て、
なんだか急に現実に戻された気分。

さっきまではくはくしていた脈も落ち着いて
山田くんの手がパッと離れた。

離れて、何故か切なくなる。

目があった山田くんがいつもみたいに
冷たく私を見ていて、悲しくなる。

「あーあ。なんで俺がこんな面倒に巻き込まれなきゃなんねぇかな」

「....助けに来たのそっちでしょ」

私ってば可愛くない。

「そういやよくも俺の前で中島とイチャイチャしてくれたよな」

山田くんがシャツのボタンを１つ外して
ハッと笑った。

そうだ。

中島くん。

逸れちゃったんだ。

山田くんにくるりと背中を向けて
教室にスマホを取りに帰ろうとしたら、

「させねぇよ。もう十分満喫しただろ、中島くんとのデート」

強い力で引っ張られて、
山田くんの胸元に背中がぶつかる。

「今から俺とデートしような？」

....低い囁きに、また飲み込まれる。