夢幻泡影 ページ15
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これがいつの時代の記憶なのか、それは私にも分からない。
ただ、辺りの景色や目の前の人物の身なりからして遥か昔の出来事であることは確かだ。
街灯なんてあるわけがない時代。夜を照らすのは、雲隠れした月だけ。
「天上天下唯我独尊……振りかざすその力、噂に違わぬものなのか気になるところ」
目の前の人影は、翡翠の髪を揺らしながらそう言った。
不鮮明な視界とは反対に、音だけは鮮明に聞こえてくる。
向けられた声も、羽虫の鳴き声も、木々がざわめく音も……全てが鮮明なのに、目の前で不敵に笑っているだろう人間の顔だけが、図ったかのように見えないんだ。
これは一体どういうことなのか。……そもそもなんで、私があいつの記憶に介入できているのだろう。
「貴様……気色悪い匂いをしているな。万物が入り交じった、醜悪な匂いだ」
「己の快・不快こそが愉悦であるお前なぞに言われたくはない。蛇の道は蛇……私もお前も、所詮は“同族”さ」
投げかけられた「同族」という言葉。人影の風体から見るに、恐らく男性だ。
翡翠の彼が何を持って自分と宿儺を同族と称したのかは、私にも分からない。
曖昧な表現が多過ぎて話の意図すら掴めないまま、ただ淡々と流れていく記憶を見ていることしか私にはできなかった。
「同族だと……？ｸｸｯ、笑わせるなッ。貴様如きの実力で、一体何ができると言うのか」
「別に私は、お前を殺しに来たというわけではない。端から世のために動こうなどという人徳を、私は持ち合わせていないからな」
自らの手を胸に添え、こちらを見据えているだろう男の表情は変わらず見えないまま。
しかし、なぜだかその声色はどこか寂しげで……聞いているこちらの胸が痛くなるような感覚に襲われる。
たかが記憶の中の話だというのに、私はどうして同情しているのだろう。
「人として生まれてきたのが運の尽きだった……故に私は、例え神を冒涜しようと我が道を進む。そのためには必要なのだ、お前のその力が」
段々とぼやけていく視界の中、聞こえていたはずの声も次第に静かになっていく。
あと少しだけと願っても、再び暗闇が私の体を包み込んでしまい、気が付けばあの一筋の月明かりすらも遠くなっていて。
……結局彼の正体を知ることがないまま、私は狭間に引き戻された。
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さくら(プロフ) - 今日一気読みしましたぁ✨続き気になるぅ〜😭もう作者様のファンになりました私！！話好きすぎる…🥺いつでもまってます！！ (8月15日 0時) (
レス) id: b75e9c1e96 (このIDを非表示/違反報告)
おむすび(プロフ) - 本当にこの話大好きです！更新待ってます！ (8月11日 23時) (レス) @page33 id: 5b99419290 (このIDを非表示/違反報告)
Nyamyu(プロフ) - 更新もっとほちぃっす… (7月27日 5時) (レス) id: 6b9d2f667c (このIDを非表示/違反報告)
D - めっちゃ読みやすいです。小説の書き方、スッゴイ好きです！つい夜更かししてしまうほど全て読んでしまいました。更新、お待ちしています。無理なさらない程度で！ (2023年4月9日 11時) (レス) id: e1459171f3 (このIDを非表示/違反報告)
いか焼き - 忙しい中でもこんなに更新してくださっている…！（泣）ありがとうございます！！人気の作品って突然更新停止してる奴が多いのでめっちゃ嬉しいです…！無理しない程度で更新してください！全然こっちは待つので！！お身体にはお気をつけて下さい！！！！！ (2022年7月4日 3時) (レス) @page21 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瀛 | 作成日時：2022年2月27日 13時
