自販機の水 ページ9
·
あの後、私は強制的に真希ちゃんから体術の稽古をつけられた。
と言っても、やり方は手合わせの時とほぼ変わらないスパルタ方式。
避けきれなくて背中に容赦なく棒当てられるし、足引っ掛けられて思い切り転ばされるし、力に負けて押し倒されるし。正直もうボロボロである。
『やっとお昼……!』
そんな私もやっとの思いで体術稽古から解放され、今は昼休み。
私は昨日買い溜めしておいた食材で適当に作ってきた塩むすびとおかずの詰め合わせを机の上に広げながら、疲れに任せて盛大なため息を吐く。
時間に余裕があったからからもっとしっかりしたお弁当を作ろうかと思ったけど、やっぱりおにぎりの方が手軽に食べれるから正解だ。
「ツナツナ」
それからしばらくして、私が教室で塩むすびを頬張っていると隣から伸びてきた手が私の肩を叩いた。
塩むすびを片手に振り向けば、狗巻くんの手から透明なペットボトルが差し出される。
『お水……もしかしてくれるの?』
「しゃけ」
「さっき自販機でAの分も買ってきたんだ。運動の後は飯も大事だが、水分補給も忘れずにな」
狗巻くんの言葉をカバーするよう、パンダくんが親切に説明してくれる。
そうか……皆自販機に行っていたから、私より教室に戻ってくるのが遅かったのか。
私あの後お腹空きすぎて速攻でこっち戻ってきちゃったからな。
『態々ありがとうね二人とも。有難く頂戴します』
「いやいや、俺達に礼を言うのはお門違いってやつだぞ。最初に言い出したのは真希だから」
「あ、おいパンダッ!」
パンダくんの言葉に、私は一番端の席に座り体を仰け反らせていた真希ちゃんへと視線を移す。
彼女はパンダくんの言葉に苦虫を噛み潰したような顔をすると、じとりとした目で私を見つめる。
「な、なんだよ……私だって鬼じゃねえんだ。人並みの心配くらいする」
『ふふ、ありがとう。真希ちゃんは優しいんだね』
「別にっ、優しかねえよ……!」
そう言った彼女の方からいきなり投げられた缶ジュース。
急なことに驚きながらも、私はそれを落とさないようギリギリでキャッチする。
「飲んで食ったら、午後はもっと扱いてやるからな!覚悟しとけよ……“A”」
『!……うん、頑張る』
なんだかんだ言って、この人達とは上手くやっていける気がした。
·
1448人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いか焼き - さ い こ お です!この話マジですこ… (2022年7月4日 2時) (レス) @page50 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
すみれちゃん - 続編決定…!ありがとうございます泣 (2022年2月27日 1時) (レス) @page50 id: 1871179020 (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - タイトルに目を惹かれ読んでみたらめちゃくちゃ面白かったです……!今後どうなるかとても楽しみ……!更新頑張ってください!! (2022年2月8日 7時) (レス) id: 382d4af167 (このIDを非表示/違反報告)
ハリネコ - 更新してくださる事が嬉しいですっ!これからも、作者さんのペースで頑張って下さい! (2022年2月3日 23時) (レス) @page27 id: 690aee62a7 (このIDを非表示/違反報告)
mithukoaaa0306(プロフ) - 面白すぎて一気に読んでしまいました! (2022年1月30日 2時) (レス) @page8 id: 96b8b42efc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:瀛 | 作成日時:2022年1月29日 15時