余興 ページ20
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……これは今、私がやったのか。
辺りに香る嘘くさい柑橘の香りは、私の鼻をすんと掠めた。
《上出来だ小娘。小僧より筋が良い……とは言え、それも必然か》
『……必然って、何が?』
《オマエは知らなくて良いことだ》
そんな問いかけを一掃した宿儺の声に、私は不機嫌に顔をしかめる。
コイツは秘密主義なのか?それにしても、私に話さないことが多すぎるように思う。
曖昧な言い方も余計に気になるし、どうせだったら教えて欲しいけれど頭を下げて頼んだところで宿儺のことだしきっとそれを見て笑うだけだ。
それだけは絶対にイヤ。屈辱を受けるのはもう充分である。
『それより、なんで態々私にヒントを与えるような真似をしたの?あんたにとっては、私が呪力を使いこなせない方が吉なんじゃ』
《……気が変わった。オマエの一生は俺のモノなのだろう?ならばどうしようとも、俺の勝手だ》
『確かにくれてやるとは言ったけど、あくまで私は私だからね。主導権まで渡すつもりはないわよ』
《そんなもの、端から必要無いさ》
私の頭の中に響いてくる声が、雑に吐き捨てられる。
……なら、何が必要で私に固執するのか。
そんな月並みの疑問は、言葉にならないうちに心の中で消えていく。
こちらからいくら質疑をぶつけたところで、向こうからまともな返答が得られるとは思えないし。
とにかく、コイツは私を殺す気が無い。それさえ分かれば充分だ。
《まあ、精々俺を楽しませてみることだな》
『……言われなくても、あっと言わせるくらいの力をつけて最期はきちんと呪ってあげるから』
私は己の手を首元に持っていきながら、脳に響くアイツの声に言い聞かせるようにして言ってのけた。
……面倒な運命を背負わされた分、恨みは誰よりも大きいはず。
嫌々でもせっかくあんたの力を取り込んだんだから、全部ものにしてからぶつけてやるさ。
『だからそれまで首を長くして待ってなさいよ、宿儺』
いつか必ず、この怨念があんたを呪うまで。
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いか焼き - さ い こ お です!この話マジですこ… (2022年7月4日 2時) (レス) @page50 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
すみれちゃん - 続編決定…!ありがとうございます泣 (2022年2月27日 1時) (レス) @page50 id: 1871179020 (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - タイトルに目を惹かれ読んでみたらめちゃくちゃ面白かったです……!今後どうなるかとても楽しみ……!更新頑張ってください!! (2022年2月8日 7時) (レス) id: 382d4af167 (このIDを非表示/違反報告)
ハリネコ - 更新してくださる事が嬉しいですっ!これからも、作者さんのペースで頑張って下さい! (2022年2月3日 23時) (レス) @page27 id: 690aee62a7 (このIDを非表示/違反報告)
mithukoaaa0306(プロフ) - 面白すぎて一気に読んでしまいました! (2022年1月30日 2時) (レス) @page8 id: 96b8b42efc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀛 | 作成日時:2022年1月29日 15時