検索窓
今日:1 hit、昨日:72 hit、合計:430,277 hit

銷魂 ページ38

·










__________悠仁が、死んだ。




改めて五条先生から聞かされた言葉は、飛び散ったガラスの破片のように私の胸に突き刺さった。


変な胸騒ぎがして倒れた後、私は延々に続く暗闇の中でそれに気が付いていたのかもしれない。

だから現実を告げられる前に、涙が溢れ出したのだ。






「……本当に、すんませんでした」






五条先生から彼の死についての詳細を色々と聞かされた後、彼と入れ替わるようにして伏黒くんがやってきた。


伏黒くんは苦しそうな顔をしたまま、私に深々と頭を下げる。

その姿はなぜだか酷く弱々しく見えて、なんて言葉をかけてあげたらいいのか分からなくなった。






『……悠仁。最期に、何か言ってた?』


「……長生きしろよ、と」


『そっかぁ』





悠仁らしい。最後の最期まで他人の心配なんて、お人好し通り越して馬鹿みたいだ。


だからあいつは、自己を犠牲にしてまで人を護ることができた。






『……伏黒くん、おいで』






私は目の前で微かに肩を震わせている伏黒くんの背中に腕を回し、抱き締めた。

彼は一瞬戸惑ったように動いたけれど、そのうち抵抗することはなくなった。






『辛い思いさせたね……ごめんね』





彼の背中を撫でながら、私はぼんやりと昨日の自販機での会話を思い出す。


あの時あんなに元気な笑顔で私を送り出してくれたのに。


人間て、こんなにも呆気のないものなんだって思ったら、自然と再び堰き止めていたはずの涙が溢れ出してきた。






『ごめんねっ……』


「っ……、」






抱き締める腕から伝わる体温が、私の孤独を深く深く抉っていく。


とうとう、私一人になった。


じいちゃんも悠仁もいなくなったこの世界で、私は何をするために生きればいいのか。




……今の私には、その意味すら分からない。






·

鎮魂→←悟る



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (435 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1449人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

いか焼き - さ い こ お です!この話マジですこ… (2022年7月4日 2時) (レス) @page50 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
すみれちゃん - 続編決定…!ありがとうございます泣 (2022年2月27日 1時) (レス) @page50 id: 1871179020 (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - タイトルに目を惹かれ読んでみたらめちゃくちゃ面白かったです……!今後どうなるかとても楽しみ……!更新頑張ってください!! (2022年2月8日 7時) (レス) id: 382d4af167 (このIDを非表示/違反報告)
ハリネコ - 更新してくださる事が嬉しいですっ!これからも、作者さんのペースで頑張って下さい! (2022年2月3日 23時) (レス) @page27 id: 690aee62a7 (このIDを非表示/違反報告)
mithukoaaa0306(プロフ) - 面白すぎて一気に読んでしまいました! (2022年1月30日 2時) (レス) @page8 id: 96b8b42efc (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2022年1月29日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。