指先と生け贄〈弐〉【両面宿儺】

胃もたれ ページ27

·









あの後、悲鳴をあげながら真希ちゃんと頑張って格闘した末に、何とかあと4つまでケーキの数を減らすことができた。



しかし、そこから先は2人揃ってギブアップ。


それからしばらくは真希ちゃんの部屋で消化を促していたのだけれど、「もう1ヶ月はケーキなんか見たくねえ」と言われ、私は先程部屋を追い出された。



……もちろん、ケーキと共に。



残りはあと4つ……これらの処理方法を考えた末、私が思い浮かべたのはやっぱり“彼と彼”の顔。






『ねえお二人さん、ケーキ食べない？』


「A……態々それだけのためにこっち来たのか？」


「すじこ」






男子寮に忍び込み、私がノックしたのは狗巻くんの部屋。


彼がタイミング良くパンダくんと居たのは、私としても好都合である。

残っているのはチョコとイチゴタルト、そしてモンブランと抹茶だ。


もちろん彼らに拒否権なんてない。私は3つ、真希ちゃんは2つ食べたんだから。






『はい、たんとお食べ』


「これか、放課後悟に貰ってたやつ」


「ツナ……」


『味はピカイチだったわよ？かなり重いけど』






現に今、私の胃の中は大変なことになっている。


人生のうちで初めてだよ、一日にケーキを3切れも食べたの。

もちろん洋菓子は普通に好きなのだけれど、一度に食べる量には限度というものがあるだろう。






『じゃ、あとは頼んだ。食べきれなかったら先生に返却しといて』






私は二人に有無を言わさず、それだけ言い残してそそくさとその場を後にする。


後ろからは「おかかあッ」という狗巻くんの悲痛な叫び声が聞こえたような気がしたが、そんなことは関係ない。


これはあくまで、いつもありがとうの意味を込めたお礼だ。



だから二人には、しっかり受け取ってもらわないとね。







·

無自覚→←ケーキ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す