蛍の花嫁【鬼滅の刃】 (ページ27)

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弐拾伍ページ27

青空に映えるほど真っ白な布きれが、そよ風に吹かれ靡いている。

『これで最後ね』

洗濯を終えた敷布を物干し竿にかけながら、私は頭上に広がる雄大な景色に一息ついた。

「ありがとうございます、A様。助かりました」

『こちらこそ。いい運動になるわ』

隣で私と同じように洗濯物を干していた二つ結びの少女の言葉に、私はいつも通りの笑顔で答える。

彼女はこの蝶屋敷のお手伝いをしている、神崎アオイという名の女の子だ。

元々は鬼殺隊の隊士として最終選別を突破したのだが、そこで植え付けられた恐怖に苛まれて以来、前線に立てなくなってしまったのだという。

今ではすっかり蝶屋敷の働き者で、しのぶちゃんの手伝いはもとより、隊士の治療、リハビリなどにも尽力している。

「そういえば、しのぶ様から聞きました。鋼鐵塚さんと縁談なさるんですか？」

『それは……まだ決めてないの。断るつもりではいるのだけど』

噂話が広まるのは早いらしく、今では私と関わりのある人に会うたび同じような事を聞かれるようになった。

蝶屋敷の人達とはずっと前から親交があるので当たり前だが、つい先日かつての仕事仲間である恋柱・甘露寺蜜璃が自宅を尋ねてきた時には驚いた。

大方、天元さんが面白がって色んなところに喋り回っているのだろう。想像に容易い。

実際、あの里長直々に頼み込まれた縁談話ともなれば、いくらでも話の種になる。

「私、A様には幸せになっていただきたいです。周りに流される必要なんてありません」

『……ありがとう。アオイちゃんは優しいのね』

私は彼女の頭を撫でながら、ふと心の中で考える。

＿＿＿＿＿＿私の望む幸せとは、何か。

「おや禿樹殿、こちらにいらっしゃったのですね」

しばらくして、辺りの静けさを絶つように庭先に面した縁側から穏やかな男性の声色が聞こえてきた。

『まあ、鉄穴森さん。今日はまた刀を届けに？』

「はい。先ほど渡し終えたところです」

優しい物腰をしたこの人は、里の刀鍛冶である鉄穴森鋼蔵。その目印として、顔には優しげな顔のお面がつけられている。

どうやら今日も、隊士のために新調した刀を届けにやってきたらしい。

『今からお帰りですか？』

「ああ、いえそれが……実は、禿樹殿にもお渡ししたいものがございまして」