検索窓
今日:5 hit、昨日:1 hit、合計:33,497 hit

ページ3

里での湯治を始めてから一週間ほどが経ったある日のこと。私は今日も鉄珍様のお住いで、平和な一日を過ごしていた。

特に何かが変わるわけでもなく、毎日は私の思うがままに滞りなく過ぎている。体の疲れを癒すには、このくらい静かな日々がちょうど良い。



「Aさん、ちょっといいかね」

『……あら、鉄珍様』



夕方の湯浴みまでにはまだ随分と時間がある。それまで何をして過ごそうかと部屋で悩んでいたところ、ちょうど開け放っていた障子の影から鉄珍様のお面がひょっこりとこちらを覗いていた。

里長であるため毎日忙しそうにしているのに、今日は昼間からどうしたというのか。

鉄珍様は小さな体でちょこちょこと部屋に入ってくると、私の前にこじんまりと腰を下ろした。



『珍しいですね、こんな時間にお屋敷にいらっしゃるなんて』

「うん、それが実はなあ……お前さんに、折り入って頼みがあって来たんやけどなあ」

『まあ、頼みですか?』

「そうそう」



すると、鉄珍様はもじもじとしながら表情の変わらないお面を私の方に向ける。その姿は里長としての鉄珍様の雰囲気とは随分違っていて、正直心配すら覚えた。

とはいえ、他ならぬこの方の頼みとあればもちろん最善を尽すつもりだ。たまりにたまったご恩をお返しするには、絶好の機会でもある。



『もちろん、鉄珍様からのお願いとあらば何なりとお受けする所存でございますが……』

「お前さんは本当に優しい子やな。まあ、そう無理強いするつもりはないから心して聞いたって」



……それは心した方がいいのか、どっちなのか。

そんな少しばかり矛盾のある言葉を聞きながらも、私は改めて鉄珍様へと向き直るように畳の上へと座り直す。


それから少しの間を置いて、辺りの静寂を切るように鉄珍様が口を開いた。





「Aさん______あんたこそ良ければ、この里に嫁いで来てはくれんか」



『………………え?』

弐→←設定



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (91 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
296人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 鋼鐵塚蛍   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

雨と雫(プロフ) - あゝもう文才が神ですね!?更新頑張ってください!個人的に夢主ちゃん可愛いな (7月1日 19時) (レス) @page6 id: 312a1378ed (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2023年7月1日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。