拾壱 ページ13
『……子供だと思いましたか?』
まるで本音を探るかのような私の言葉に動揺したのか、彼はおもむろに肩を浮かすと、触れていた私の体温を払うようにして手を引いた。
そしてそのまま、思い切り顔を背けられてしまう。どうやら早々に、関わり方を間違えてしまったらしい。
だがこれも大切なことだ。私達が今どんな関係であろうと、年の差というものは言葉一つでは埋まらない。
きっと彼から見た私は子供で、その分頼りなく映ってしまうだろう。
『私はあなたと同じように、初めからこの縁談話に乗り気ではありません。もちろん一個人としての理由もありますが、まず第一に私とあなたでは歳が離れすぎている』
現実的に考えても、共に生活する上でその差は顕著に現れるはず。当たり前ながら、そうなった時に苦労するのはきっと私よりも大人である鋼鐵塚さんの方だ。
いくら鉄珍様からの頼みと言えど、私は相手方に負担をかけてまで聞き入れる話ではないと思っている。
『だからこそ、あなたにも真剣に考えていただきたいと思っています』
話を飲むにしろ、飲まないにしろ。これから話がどう進もうと、私一人の判断では決めかねることだから。
とはいえ、聞いていても彼にその気があるようには思えない。それもあって、鉄珍様も気が休まらないのだろう。
『……私は既に鬼殺隊を抜けた身ですが、あなたは今も隊士を支え続ける立派な刀匠です。日々の鍛錬のためには、こんな死に損ないの小娘の助けなど野暮なはず』
匠の技というのは、素人が口や手を出していいものじゃない。彼らは日夜、自身の美学とやらに向き合いながら刀を打っているのだ。
だからこそ、何の知識も知恵もない私ではなく、この人の支えとなれるような
『それに、きっとあなたのような人ならばそのうち嫁に来たいという方も現れるはずですよ』
私は未だに顔を背けたまま動かない鋼鐵塚さんの姿を見つめながら、彼のつけているお面に向けて手を伸ばした。
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雨と雫(プロフ) - あゝもう文才が神ですね!?更新頑張ってください!個人的に夢主ちゃん可愛いな (7月1日 19時) (レス) @page6 id: 312a1378ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀛 | 作成日時:2023年7月1日 16時