完璧少女の正体は・・・【時透無一郎】 (ページ16)

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拾弐ページ16

時「基本的にウザい。」

『私も？』

時「Aは別だよ。」

『良かった。』

時「どこの学校から来たの？」

『私立鈴ヶ崎学園。ほら、たしか隣町の。』

時「へぇ、名門校じゃん。人間百科事典なだけあるね。」

私立鈴ヶ崎学園。

隣町である鈴乃町にある名門校。

受験が必要な学園で、そんじょそこらの学校とは明らかに学力に差がある。

そこの学校の制服は、勿忘草色のブレザーで、制服を見ただけで名門校の生徒だと識別できる。

また、そこに通う生徒は皆人間百科事典の学力を持っているとかいないとか。

『人間百科事典・・・？何よそれ・・・』

Aは呆れたような素振りを見せ、ため息をついた。

『あ、まーた陽葵が余計なことをっ！まったく、人を百科事典呼ばわりするなんて。許せぬ、あの妹！』

時「でも百科事典なのは確かだよ？」

『もーっ、無一郎くんまで私を百科事典呼ばわりするの？』

時「ハハッ。面白いね、陽葵って。」

Aはほおを膨らませてプンスカ怒った。

でも口調が柔らかいため、まったく怖くない。

『話をそらさないで・・・って、着いたよ。図書館。』

Aは立ち止まり、近くにある大きな建物を指さした。

深緑色の蔦が絡まったクリーム色の壁で、どこか古城を思わせるおしゃれなデザイン。

そして、いくつもある窓からは沢山の本が立ち並ぶ様子が見えた。

時「・・・こんな図書館、あったんだ。」

ずっとキメツ町で過ごして来たけれど、こんな建物があるとは知らなかった。

Aは平然とした態度で図書館に足を踏み入れる。

そこには。

本。本。本。

本しか無かった。

文学作品から数学の参考書まで、多種多様な本が立ち並んでいた。

本棚の間にある、細い通路は、裏路地みたいで、迷子になりそう。

Aはそこを見知った町の道のようにスタスタ歩く。

迷ったような素振りも見せず、ただ澄ました様子で歩いて行った。

僕は、迷わないように必死になってAについて行く。

Aは他の本に見向きもせず、目的の本だけを目指していた。

そして、ある本棚の前で、ピタリと足を止める。

『・・・ここよ。』

その本棚には。

分厚くて難しそうな本が並んでいた。

数学の参考書、科学の論文集。

凡人には到底分からない高レベルな本ばかりが並んでいた。

僕はそれを平然とした態度で見上げるAに、少々たじろいでしまった。