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episode4 ページ5

*4*


壮馬「Aさん、もしよかったら、このあとお食事でもいかがですか」




取材が無事に終わり解散になると、壮馬さんにそう誘われた。

お酒とおつまみがおいしくて、隠れ家のような店を知っているからと。

彼氏のことが頭をよぎったけれど、仕事の打ち上げの範疇(はんちゅう)だと自分に言い訳をし、私は「ぜひ」と返事をしていた。


 ◇ ◇ ◇


連れてきてくれたのは創作イタリアンの店で、常連らしい壮馬さんは、なにも言わなくてもいちばん奥の個室へと案内された。

リースリングの白ワインに、オリーブの盛り合わせ、バーニャカウダ、パテドカンパーニュ、今が旬の(さわら)のカルパッチョを注文。




壮馬「あ、マッシュルームのアヒージョも頼みましょう。ぼく、大好きなんですよ」

「はい」

壮馬「自分でもよく作りますよ」

「あっ、お料理が趣味なんですもんね」

壮馬「なんか、すみません。今日の取材のために、きっとぼくのこと調べたんですよね」

「あ、いえ、そんな」

壮馬「いつかAさんにアヒージョ作ってあげたいなー。……って、ちょっと無理かな」

「食べてみたいです」




白ワインで乾杯すると、壮馬さんはすぐに弁解するかのように話し出した。




壮馬「さっきの取材で、しおりは使わないって言いましたけど、Aさんからもらったしおりはずっと使ってます。ただ、ぼくは何冊も同時に読むので、適当な紙をしおりにすることがあるのも本当です。取材で嘘は言っていません」

「まさか今でも持っていてもらえたなんて驚きました」

壮馬「こんな素敵なしおりだし、しかも、映画のワンシーンみたいな状況だったじゃないですか。ぼくの頭の中では『放課後の音楽室』が流れてましたよ。確実に春の風が吹いてましたよね、室内でしたけど」

「ふふ、本当に中二病キャラなんですね。あ、ごめんなさい」

壮馬「はは、それも資料に書いてありました?」




私は自分のかばんから本を取り出して、色違いのピンク色のしおりを見せた。




「おそろいなんですよ」

壮馬「そうだったんですか! なおさら大切にしないと」




壮馬さんは私の手もとを見ている。




壮馬「指輪……、婚約指輪、ですか?」

「あ、……はい」

壮馬「そうですか。誰かのお嫁さんになっちゃうのか。……でも、こうして食事するのは、大学の先輩と後輩、それから仕事仲間として、……セーフ、ですよね」

「えっと、……はい」

壮馬「よかった」

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月時雨(つきしぐれ)(プロフ) - 詩奈さん» コメントありがとうございます。読んでいただけた上に、コメントまでくださって、本当に嬉しいです。はらはらを乗り越えて、良い読後感になっていたとしたら幸いです。 (2021年7月28日 8時) (レス) id: e3ea42d451 (このIDを非表示/違反報告)
詩奈(プロフ) - お疲れ様でした!読んでてはらはらすることもありましたが、2人のトゥルーエンドで良かったです! (2021年7月27日 22時) (レス) id: 67cdd7411b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月時雨(つきしぐれ) | 作成日時:2021年7月17日 19時

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