episode２ ページ3
*２*
大学を卒業した私は、雑誌社に就職した。
人気のある女性ファッション部門に配属され、学生時代から付き合っている彼氏との交際も順調だ。
彼氏は同じＷ大学の理工学部で化学を専攻していたから、現在は薬剤関係の仕事についている。お互い卒業して１年、そろそろ結婚を考えようと先日言われた。
大きな刺激こそないけれど、なんの不満もない日々を送っている。
「え、異動ですか？」
編集長「そう、芸能・音楽ねー。A、エンタメいけるでしょ。もちろん勉強してるよね」
「はい、大丈夫です」
芸能・音楽部門への異動。当然こういったことにそなえて、広くいろいろな知識を頭に入れている。
俳優、アイドル、音楽ならポップスからロック、それから海外アーティストだって。
編集長「声優もいけるよねー」
「せ……」
しまった、声優人気のこの時代、勉強しなければと思ってはいたけれど、あとまわしになっていた。
編集長「どうした？」
「いえ、大丈夫です。お任せください」
言ってしまった！ 今夜から睡眠時間をけずって猛勉強だ。それでも初取材の日までに間に合うかどうか……。
唯一の救いは、今回の取材相手は声優界の文学青年だそうで、本に関する話題が中心だということだ。
――えっと、斉藤壮馬。……えっ！ 予習しようにも活動の幅が広すぎる！
「間に合わない……」
夜中の２時。ひとり暮らしをしているマンションの部屋で、むなしく弱音をはく。
今回の取材内容には関係なくても、取材相手のことはきちんと知っておきたかった。
出演したアニメや舞台、音楽活動、過去のラジオ番組、彼の書いたエッセイ……、会社から持ち帰った資料の山にうもれて、私はスマホ検索という最終手段に手を出す。
「ふーん。……へぇ」
――えっ！ Ｗ大の文学部出身なの？
ああ、だから私に任されたのかな。同じ大学、しかも同じ学部の出身。それだけで親近感がわくから。
画像を検索して、「イケメンだなー」などとのんきにつぶやいていたが、なにかがひっかかった。
私、この人に会ったことある……？
いや、メディアで見ただけかな。
――私の３歳年上。もしかしたら……。
遠い遠い記憶。
ふわっと香る柑橘系のかおり。
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月時雨（つきしぐれ）(プロフ) - 詩奈さん» コメントありがとうございます。読んでいただけた上に、コメントまでくださって、本当に嬉しいです。はらはらを乗り越えて、良い読後感になっていたとしたら幸いです。 (2021年7月28日 8時) (
レス) id: e3ea42d451 (このIDを非表示/違反報告)
詩奈(プロフ) - お疲れ様でした！読んでてはらはらすることもありましたが、2人のトゥルーエンドで良かったです！ (2021年7月27日 22時) (レス) id: 67cdd7411b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月時雨（つきしぐれ） | 作成日時：2021年7月17日 19時
