松野家三男やってます。9

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「また行きたいね」



『今度は家族全員で行きたい』



「そんな金あればの話だけど」



『無いね』



「無いな」



松野家は9人家族という大家族だ。
旅行出来るならしてみたいものだ。
今日みたいに福引で当てなくてはいけないだろう。

これには3人共納得するしか無かった。



「さて、問題はアイツら」



『まあ羨ましがられるであろう。梨で許してくれるかな』



「許すのか？」



『微妙…』



下手すれば殺されるであろうこの状況。
だが3人は顔を青ざめたりせずに平然としており、
袋の中に入っている梨を見詰めた。


ｰｰｰｰｰｰｰｰｰ




「なんでお兄ちゃんを誘わなかったんだよぉ！」



「僕たちに内緒で3人だけで旅行とか酷すぎ！
しかも茨城で日帰り旅行！？」



「シメるぞ」



「コロース！」



案の定、日帰り旅行のことを知った4人は
最早チンピラかと思わせるくらいの言葉を吐いていた。



「お土産に梨買ったよ」



『茨城の名産物である梨って色んな種類あるんだよ。
皆の為に全種類買ってきたんだけど…』



「要らないなら…」



「お土産は貰う！でもそれとこれとは話が別でしょ！」



やはり旅行とお土産では天秤が圧倒的に旅行の方が大きく、
トド松は頬を膨らませながら3人を見ていた。
お土産は頂くと言うので3人は松代に頼んで梨を剥いてもらうことに。


ｰｰｰｰ



松代に梨を剥いて貰い、皿の上に乗っている梨を
七つ子はちゃぶ台を囲って食べながら話していた。



「へえ、ハイ松が福引で当てたんだ」



『それに、日帰り旅行は僕が誘ったの。
こうなることを予想して先に帰ってきた人に声を掛けただけ』



「てことは、俺がアイツらより先に帰ってたら俺が行けたってこと？」



『どうだろうね』



「絶対そうだろ！」



おそ松のツッコミも無視して、ハイ松は爪楊枝で梨を刺して口に入れ、
頬を押えながら茨城の梨を堪能していた。
おそ松はそんなハイ松を不服そうに見ながらも、
梨の美味しさには勝てず頬を緩めてしまっていた。



『良い写真も撮れましたよ〜』



「あれ？うちにそんなデジカメあったっけ」



『これ僕の』



オレンジ色のデジカメを見せながら言うハイ松に
トド松は驚きのあまりその場から立ち上がってしまう。



「えぇっ！？ハイ松兄さんいつの間に！？
え、いつ？いつ買ったのそれ」



『内緒』



トド松の質問にハイ松は笑いながら返し、
また梨を頬張ったのだった。

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