松野家三男やってます。9

●日帰り旅行 ページ39

*



「おめでとうございます！
2等の日帰り旅行チケット3人分です！」



『……日帰り…』



ｰｰｰｰｰｰ




『3人分って言うのがなぁ…』



ちゃぶ台に伏せながら旅行券を持ったハイ松は
福引で貰った3人分の旅行券を見て複雑そうな顔をしていた。
9人分なら家族で旅行出来て良いのだが、
貰ったのは3人分のチケットのみ。

松野家で争奪戦が起こりそうだ。



「帰ったぞ、マイブラザー」



『おかえり、カラ松兄さん』



「ハイ松だけか？」



『うん』



革ジャン、サングラスといったいつもの私服を身に纏って、
出掛けていたカラ松が帰ってきて、
ちゃぶ台に伏せているハイ松の姿を見て隣に座る。

ただし掛けているサングラスは外さなかった。

ハイ松はジッとカラ松を見詰めていた。



『……ねぇ、カラ松兄さん。茨城って興味ある？』



「茨城？」



『福引で茨城の日帰り旅行券当たったんだけど、
そのチケットが3人分なんだよね』



「一緒に行きたい奴は居ないのか？
一松と十四松と仲良いからアイツらと行ってきたらどうだ？」



『十四松はともかく、一松が進んで行くと思う？』



「いや、案外乗り気かもしれないぞ？」



『…………』



ハイ松は考えた。

もし仮に一松が居間に居たとして、
日帰り旅行に誘ってみた時の彼の反応を。



ｰｰｰｰｰｰ




「寒いし、面倒臭いし、俺はいい」







「行っても良いけど、旅行中に何起こるか分かんないよ？」





ｰｰｰｰｰｰ





『無い』



「そ、そんなにか？」



『うん、絶対に無い』



絶対と断言するハイ松を見て、カラ松は少し戸惑ってしまう。
まさかそこまで言うとは思っていなかったのだろう。



『あ、そうだ、カラ松兄さん。
僕とあと1人で日帰り旅行行かない？』



「俺は秘密にしとくから、後の2人と行ってきたらどうだ？」



『え、えっと、あんまりカラ松兄さんと出掛けたこと無いし、
良かったらどうかなって…思ったんだけど…。
カラ松兄さんが良いならそれで…』



「行こうじゃないかブラザー！Let's go to茨城！」



『え、え？』



頬を掻きながら申し訳なさそうに言うハイ松だったが、
弟からこんなことを言われては断る訳も行かず、
まだあと1人揃っていないというのにカバンを持って
準備万端で行こうとするカラ松。

ハイ松は顔を上げて疑問符を浮かべていた。



『か、カラ松兄さん日帰り旅行行ってくれるの？』



「あぁ！愛するブラザーのお願いだからな！」

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