31 お嫁さんになるために ページ32
よし。反撃開始。這いつくばったまま細い足首をむんずと掴んだ。オラアアアと雄叫びをあげて押し倒す。アメジストのひとみは驚愕していた。わたしがやり返すとは思ってなかったんだろう。クソザコ弱者だってやるときはやるんだよ。
わたしは喰われるだけの蝶じゃない。いい教訓を教えてあげよう。窮鼠猫を噛む、ってね。
「……大丈夫?」
「……口の中を切った」
カルトちゃんはぶっと血を地面に吐くと、再び攻撃にかかる。わたしに石を取らせるまでもなくこのゲームを終わらせるつもりだろう。させてたまるか。敵前逃亡が大好きなわたしだけどもう逃げるのはやめる。キルアのお嫁さんになるために。
念で拳をおおって肩をねらう。この屋敷で動体視力を鍛えてきたカルトちゃんにはハエが止まるような速度に見えたらしい。ヒョイとかわし、ついでに腹に膝蹴りをくれる。痛い、とかそういうもんじゃない。身体がおかしな反応をする。胃が伸縮する。ゲロイン再び。ゾルディックファミリー、手厳しすぎる。
「ウチの修行はね、血ヘド吐いてからが始まりなんだよ」
カルトちゃんはわたしにトドメを刺そうとする。その瞬間だ。わたしは脳みその血管がブチ切れるほど集中して、伸びてくる腕を掴む。
思い出せ、思い出せ、思い出せ!!
彼の──あの動きを!!!
殴りかかってきた力を丸ごと利用する。
カルトちゃんがバランスを崩す。そこにわたしが全体重をかけて地面に倒した。起きられる前に、ポケットをまさぐって石を取った。
敗者は信じられないという顔で、仰向けのまま両手を上げた。きみの勝ち。
*
「あなたはお優しくなんかありませんでした」
目撃していたらしいゴトーさんは、ディナーの後で話しかけてきた。
「あなたはカルト様を押さえつけるイルミ様を止めようとしたのではなく、イルミ様の動きをまねるために観察していたのですね?」
わたしがうなずく。
「今までの非礼を詫びます。これから仲良くしてくださると、私、嬉しいです。あなたはゾルディックにふさしい」そうゴトーさんは頭を下げてきた。
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有希(プロフ) - mayaさん» うわあああああ!!!!!(mayaさんへの感謝と次章を読んでいただける喜び)これからもどうぞ本作をよろしくお願いします! (2021年4月5日 20時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - フェルメルトさん» 初めまして、フェルメルトさん!コメありがとうございます。今後とも誤字脱字を見つけられたらソッと教えていただけると嬉しいです。 (2021年4月5日 20時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
maya(プロフ) - うわああああ(感嘆と次回への期待、そしてここまで書いてくれたことへの感謝の叫び) (2021年4月5日 20時) (レス) id: e6b38507b3 (このIDを非表示/違反報告)
フェルメルト - スミマセン!!一話のエラベーターってもしかしてエレベーターじゃないですか?ほんとスミマセン (2021年4月5日 17時) (レス) id: d6649fea10 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - ゾル家にやさしくされるよりぼこされたい、こんな猟奇的なユメショをリアルで好きだと言ってくれてホントに嬉しいです。弊社の夢主はゾル家に対してMなんで何されても喜びます。私個人としてもこの作品が大好きなので、どうぞ選挙編までお付き合いください! (2021年4月1日 21時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:有希 | 作成日時:2021年2月11日 8時