23 キキョウさん ページ24
シルバさんが興のさめたように言うから、火に油をそそいでしまったみたい。キキョウさんは席を立って、右腕でテーブルの上の、美味しそうな料理をなぎ払う。耳障りな音が連続して大広間に響いた。キキョウさんをなだめる者はいない。ゼノさんとシルバさんはため息をつくだけだ。
「なんで誰も殺そうとしないの!?ねえアナタ!なにを悠長に笑ってるのよ!!見てちょうだい、あの顔!!私たちとはまったく無縁で、人を殺すことなんておそろしくてできやしない、自分の身を守る方法すらわからない、日向で甘やかされて育ってきたような小娘の分際で……キルはゾルディックを継ぐのよ!?!?」
キキョウさんは絶叫しながら、テーブルだったものを飛び越える。目にも止まらないスピードで迫ってくると、わたしのおでこスレスレに扇の先を突きつけた。風圧で髪型がくずれる。イルミさんはなにも言わず、指一本すら動かさないで、殺されかけてるわたしと、わたしを殺しかけてる自分の母をじっと見つめていた。
「撤回しなさい。さっきの言葉を。そうしたら今はまだ生かしてあげる」
「お断りします」
キキョウさんが狼狽える気配が伝わってくる。扇の位置がおでこのど真ん中から数インチずれる。
「わたしはキルアに会いたくてこの屋敷に足を踏み入れたんです……そう簡単に引きさがるわけにはいきません」
扇の先端がおでこの肉に食い込む。鋭利でもないのに血が垂れてくる。キルアはゾルディックの屋敷から離れたところで、帰る場所は変わらなくて、しがらみから抜け出せなかった。だからわたしが攫ってあげる。居場所ならわたしとゴンが作ってあげる。
少しでも力を抜くと、後ろに倒れてしまいそうだった。シルバさんとゼノさんの刺さるような視線を痛いくらい感じる今、認めてもらうには、一歩でも退いたらいけないとわかっていた。どれくらい時間が経ったんだろう、シルバさんがキキョウと呼んだ。その声はとてもじゃないけど、妻相手とは思えないものだった。
「だけどアナタ」
「扇をさげろ」
有無を言わせぬ語気に、キキョウさんはしぶしぶと腕をおろすと、肩をちぢこませた。
521人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
有希(プロフ) - mayaさん» うわあああああ!!!!!(mayaさんへの感謝と次章を読んでいただける喜び)これからもどうぞ本作をよろしくお願いします! (2021年4月5日 20時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - フェルメルトさん» 初めまして、フェルメルトさん!コメありがとうございます。今後とも誤字脱字を見つけられたらソッと教えていただけると嬉しいです。 (2021年4月5日 20時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
maya(プロフ) - うわああああ(感嘆と次回への期待、そしてここまで書いてくれたことへの感謝の叫び) (2021年4月5日 20時) (レス) id: e6b38507b3 (このIDを非表示/違反報告)
フェルメルト - スミマセン!!一話のエラベーターってもしかしてエレベーターじゃないですか?ほんとスミマセン (2021年4月5日 17時) (レス) id: d6649fea10 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - ゾル家にやさしくされるよりぼこされたい、こんな猟奇的なユメショをリアルで好きだと言ってくれてホントに嬉しいです。弊社の夢主はゾル家に対してMなんで何されても喜びます。私個人としてもこの作品が大好きなので、どうぞ選挙編までお付き合いください! (2021年4月1日 21時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:有希 | 作成日時:2021年2月11日 8時