22 息子さんをください ページ23
イルミさんはわたしの肩を抱いて長い廊下をぬけていく。ひとの気配が少しもしなくて不気味だ。大広間はすでに贅沢な匂いで充満していた。幾つものシャンデリアの下に並ぶのは豪勢なディナー。隣の味方(かもしれない)のイルミさんを含めると、わたしは計6名のゾルディックに囲まれているということか。オーケイ。四面楚歌ってことね。
「ここに来たということは……
イルミに認められたいうことだな。お嬢さん」
わたしを睨むように見すえてゆったりと喋るのは、ゾルディック家が当主シルバさんだ。
「まあね」
イルミさんはさらりと肯定した。とてもそうには見えないんだけど。ツンデレさんめ。じっくり品定め、と言ったところだろう。シルバさんはわたしの頭のてっぺんから足先まで眺めた。視線だけでひとを殺してしまいそう。切れ長のサファイアの瞳は一見キルアそっくりに見えた……だけど違った。キルアにこんな目はできない。
「名は」
「Aといいます」
「そうか。何のためにここに来た?」
その言葉を待っていた。
もうずっと温めてきたセリフ。
「シルバさんから息子さんをもらうためです」
かくしてゾルディックの大広間は、今この瞬間地球上で一番静かな場所となった。耳が痛くなるような沈黙がおりる。それを破ったのは、洪水のようなシルバさんの高笑いだった。
「ははははは!そうかそうか、キルアが婿に欲しいか!何を言うかと思えば、はははははは!!」
ミルキさんとカルトちゃんとイルミさんは相変わらずなにを考えてるのかわからない表情で、自分の父親の爆笑する姿をぼんやり見るだけ。ゼノさんが咳払いをひとつ。
「お前の度胸は認める。が……」
その瞬間だ。研ぎ澄ませた感覚が念の気配をとらえる。身体をひねった直後、さっきまでわたしの顔あったところの壁に穴が開いた音がした。光線の出所をたどると……たどらなくてもわかっていたけど……キキョウさんが扇の先をまっすぐ向けてきていた。
「……キキョウ、勝手なマネをするな」
「勝手なマネですって!!??」
挨拶早々お義母さんがブチギレて殺しにかかってきた。これがゾルディック家の洗礼か。
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有希(プロフ) - mayaさん» うわあああああ!!!!!(mayaさんへの感謝と次章を読んでいただける喜び)これからもどうぞ本作をよろしくお願いします! (2021年4月5日 20時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - フェルメルトさん» 初めまして、フェルメルトさん!コメありがとうございます。今後とも誤字脱字を見つけられたらソッと教えていただけると嬉しいです。 (2021年4月5日 20時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
maya(プロフ) - うわああああ(感嘆と次回への期待、そしてここまで書いてくれたことへの感謝の叫び) (2021年4月5日 20時) (レス) id: e6b38507b3 (このIDを非表示/違反報告)
フェルメルト - スミマセン!!一話のエラベーターってもしかしてエレベーターじゃないですか?ほんとスミマセン (2021年4月5日 17時) (レス) id: d6649fea10 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - ゾル家にやさしくされるよりぼこされたい、こんな猟奇的なユメショをリアルで好きだと言ってくれてホントに嬉しいです。弊社の夢主はゾル家に対してMなんで何されても喜びます。私個人としてもこの作品が大好きなので、どうぞ選挙編までお付き合いください! (2021年4月1日 21時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:有希 | 作成日時:2021年2月11日 8時