20 試しの門をブチ開けろ ページ21
ゼブロさんがゴンに電話を貸してくれている間、ふいに話しかけられた。
「きみは……きみは何だか、キルア坊っちゃんにとくべつ会いたいみたいだね」
「わかりますか」
「わかりやすいからね」
からかわないでくださいよう。んもう。映画の予告みたいに細切りの記憶が頭のなかで再生される。メインはキルアの顔だ。「お前とはもう会わない」なんて、言葉とは裏腹にあんなに熱烈な目をしておいて、逃げるんじゃないよ。
「チューしたんです、わたしに」
ゼブロさんはすこし戸惑ったあと、「坊っちゃんも年頃なんですねぇ」って笑った。そうしてわたしの知らないキルアに思いを馳せるように目を閉じた。
*
「ほっ」
ひとりだけ念を使うなんて反則?うるせえ。わたしは楽に生きたい。地道な努力はなるべくしたくない。成功までの最短ルートをいつだって模索している。綺麗事はクソの役にも立たん。結果がすべてだ。過程なんてどうでもいい。わたしは返されたテストで、☓がつくべきところに○がついていても申告しない女だった。
「……それでも2が限界かぁ」
キルアは念を習得していなくとも3の門まで開けているのに。自分のザコさにちょっと凹んだ。3人組とゼブロさんはわたしの力に目を丸くしていた。
「それが"念"か……A、ゴンから聞いたぞ。死にかけながら手に入れたんだって?」
「死にかけって言うか、殺されかけながらね」
今まさにその人物の住む屋敷へ向かおうとしているところだ。我ながらクレイジーな神経をしている。
「ひとりで先に行くって言ったら、3人とも、軽蔑する?」
レオリオは「友情なめんな」って殴ってきた。
「行って。後から絶対に追いつくから」
そう力強く言うゴンに救われる。
「軽蔑こそしないが、心配はしている。頼むから死なないでくれよ」
門1枚の境界線を超えたとき急に怖気づいた。これ以上、足が動かない。クソダサい。そんなわたしの背中をクラピカはトンと押してくれる。侵入者を許して、門が閉まった。
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有希(プロフ) - mayaさん» うわあああああ!!!!!(mayaさんへの感謝と次章を読んでいただける喜び)これからもどうぞ本作をよろしくお願いします! (2021年4月5日 20時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - フェルメルトさん» 初めまして、フェルメルトさん!コメありがとうございます。今後とも誤字脱字を見つけられたらソッと教えていただけると嬉しいです。 (2021年4月5日 20時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
maya(プロフ) - うわああああ(感嘆と次回への期待、そしてここまで書いてくれたことへの感謝の叫び) (2021年4月5日 20時) (レス) id: e6b38507b3 (このIDを非表示/違反報告)
フェルメルト - スミマセン!!一話のエラベーターってもしかしてエレベーターじゃないですか?ほんとスミマセン (2021年4月5日 17時) (レス) id: d6649fea10 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - ゾル家にやさしくされるよりぼこされたい、こんな猟奇的なユメショをリアルで好きだと言ってくれてホントに嬉しいです。弊社の夢主はゾル家に対してMなんで何されても喜びます。私個人としてもこの作品が大好きなので、どうぞ選挙編までお付き合いください! (2021年4月1日 21時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:有希 | 作成日時:2021年2月11日 8時