176 頼みの綱 ページ36
「お風呂わいたよ？キルア」
「あ、オレ後でいいわ。おかず作っときたい」
「そ？じゃあわたしが入っちゃうね」
「おー」
どれどれ、鍋を開けたら蒸気といい匂いがたちのぼってきた。今日のスープはAの好きな豚汁だ。おかずはえびとアスパラの塩炒めで、温野菜サラダを追加。オレが一ヶ月前にAの家に転がりこんでから、こうして家事当番の分担を順番に回している。Aはいつも味噌たっぷりの豚汁がいいとうるさいから、味見して微調整してやらないと……うーん、ちょっと薄いか？
「キルア」
「んー」
「一緒に入る？」
むせた。豚汁ふいた。マンガみたいに咳き込むオレを見てAが満足そうに笑っている。何が面白いんだコラ。バカじゃねーの。7年前じゃあるまいし。「真っ赤っか〜のキ〜ルア〜」とAは変な節をつけて歌いながら風呂場にひっこんでいった。からかうのやめろよなぁ。本当に一緒に入ろうとしたら殴って追い出すくせに。
*
「どうしたら彼氏彼女に戻れるのか……って？」
携帯の小さな画面の中でゴンが不思議そうな顔をしている。こっちはもう夜9時だけど、くじら島はまだ昼時みたいだった。あの純度100パーセントのうつくしいものにあふれた島を思い出す。
「いや、オレじゃなくて友達の話なんだけどさ。そいつが言うには昔付き合ってた相手は、今も意外と同じ気持ちっぽいんだけど、その決定打がないって言うか。近寄っていいのかよくわからないって言うか」
「つまりキルアがAと元の鞘に納まりたいってわけね」
「……まあ、そういうことだな」
お見通しか。ちぇ。下手にごまかしたってゴンにはバレバレだった。うーん、とゴンはあごに指をあてて考える素振りをする。
「そういえば好きって言った？」
「え」
「ほら、だから。Aのことが好きだって。前の関係に戻りたいとか、そういうのじゃなくて。Aのことが今も大好きだから、意味もなくふたりで出かけたいし、触れたいし、そのためにAの恋人になりたい……ってこと、ちゃんと言った？」
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ま - 一気に読み切ってしまいました！楽しかったです！途中感情移入して泣いちゃうとこもありました笑更新楽しみに待ってます！ (4月16日 21時) (
レス) @page39 id: 46b1d29c13 (このIDを非表示/違反報告)
◎SaE(プロフ) - あなたの書く文章が大好きです。 (12月22日 11時) (レス) id: 5b13a1df84 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 更新待ってます。 (9月2日 23時) (レス) id: fdd6e06bf4 (このIDを非表示/違反報告)
こもれび(プロフ) - 有希さんと好みが似ているのか、好きなキャラや印象で近しいものが多くて共感しまくりです。こちらの作品を詠ませて頂くのは多分これが3度目なのですが、性懲りも無く毎度同じ場面で泣いてます。顔面が涙でぼろぼろです。言葉巧みな表現が大好きです。応援しています。 (2022年12月28日 4時) (レス) @page39 id: 4d4f4ab205 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇる-ameizumi(プロフ) - 今出ているところまで読み切りましたがとて好きな文章構成や内容で、ところどころでほんとに泣いてしまいそうでした。終わりが見えてきそうですが最後まで応援しています。 (2022年12月23日 0時) (レス) id: 5d2780f034 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：有希
| 作成日時：2021年11月14日 16時
