161 前言撤回矛盾上等 ページ21
「待って……待ってよ！」
おおきな何かに背中に押されるようにして、わたしは走り続ける。黒髪がふわりと曲がり角で消えた。クスクス。くすくす。笑い声が聞こえる。ホラー映画は苦手なのに。
「あれから７年も経ったのに、今更もどってどうするつもりですか？キルアに会いに行くんですか？」
「７年！？向こうじゃそんなに経ってるの……ってことはキルアわたしより年上じゃん」
「ええ。永遠の愛など信じない、男女のあれそれは一時的な勘違い……Aはそう思ってるんですよね」
「……そうだよ！！永遠の愛なんて無いもんね！！」
「じゃあ何でいまAはみっともなく汗かいて追いかけてくるんですか？キルアがあなたのことを今でも想って待っていると信じてるんですか？」
「……信じて……ねーよ！！！」
何もかもわからないけど、今ここでコイツを逃したらいけないとどこかでわかっていた。シャトルランでもマラソン大会でもこんなに走ったことはない。ふざけんな。ここがどこかもわからない。それでもわたしは突き進む。迷路みたいな住宅街に迷い込む。
「ありえるわけねーよな！！！わたしのことを今も好きだって！！！あんなに強くてカッコいいキルアだし！！！今だって恋人いるだろうし！！！」
「それはAのことでしょ」
「……ともかく！！こんなに未練タラタラで引きずってるのなんて……わたしだけに決まってる！！」
「ノリの恋愛で上書き保存したのでは？」
「……おっかしいよな！！できてねーよ！！」
上書きしようとすればするほど、むしろあの記憶がきらめいてくる。思い出は美化されるって言うのもあるだろうけど。誰と恋しようともだいたい同じ質感だと思ってた。終わればすべて一緒だった。のに。
「キルア=ゾルディックは……わたしの初恋で、わたしの永遠なんだよ！！一生、終わらないんだよ！！！！」
あの女のクスクス笑いが途切れたと思ったら、とつぜんドカンと背中を蹴られた。待ち伏せていたみたいだ。そうだ、それでいいA。すっ転ぶと手をついたコンクリがじわじわと見慣れない石畳に変わり、空気はどこか懐かしい匂いがした。
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ま - 一気に読み切ってしまいました！楽しかったです！途中感情移入して泣いちゃうとこもありました笑更新楽しみに待ってます！ (4月16日 21時) (
レス) @page39 id: 46b1d29c13 (このIDを非表示/違反報告)
◎SaE(プロフ) - あなたの書く文章が大好きです。 (12月22日 11時) (レス) id: 5b13a1df84 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 更新待ってます。 (9月2日 23時) (レス) id: fdd6e06bf4 (このIDを非表示/違反報告)
こもれび(プロフ) - 有希さんと好みが似ているのか、好きなキャラや印象で近しいものが多くて共感しまくりです。こちらの作品を詠ませて頂くのは多分これが3度目なのですが、性懲りも無く毎度同じ場面で泣いてます。顔面が涙でぼろぼろです。言葉巧みな表現が大好きです。応援しています。 (2022年12月28日 4時) (レス) @page39 id: 4d4f4ab205 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇる-ameizumi(プロフ) - 今出ているところまで読み切りましたがとて好きな文章構成や内容で、ところどころでほんとに泣いてしまいそうでした。終わりが見えてきそうですが最後まで応援しています。 (2022年12月23日 0時) (レス) id: 5d2780f034 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：有希
| 作成日時：2021年11月14日 16時
