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女子高生、前進あるのみ ページ8

テスト期間が終わると、担任の先生との面談の時期に入った。わたしは廊下でロッカーにもたれながら、早く前のひとが終わらないかなぁと思う。窓を開けてたって風がちっとも入らないから汗が止まらなかった。蝉の声は聞いているだけで体温をあげる不思議な作用がある。ようやく名前を呼ばれて、エアコンの効いた極楽に逃げ込むことができた。わたしの進路希望をひととおり見ると、先生はふしぎそうに感想を漏らした。



「前はとりあえず私学に進学って言ってたのに、ずいぶん方向転換してきたな」

「はい」

「心境の変化でもあったのか?」

「かもしれません」

「ふうん?」

「忘れました」



先生はキョトンとしたあと、「なんだそれ」っておかしそうに笑った。



「しかしなA、簡単になれるものじゃないぞ。この職業は」

「大丈夫です。知識なら十分にあるので」

「義手と義足の?」

「はい」


 先生はまた笑い声を上げた。何を言いたいのかはわかる。彼は数学の教師で、わたしの理数科目の点数をよく知っているのだ。



「数学ぎらいのお前が一体どこでいつ学んできたんだよ?」

「忘れました」

「何でもかんでも忘れるな……」


「わたしは誰かが生きるために必要な手足を作りたい。そんな気持ちがふってわいたんです。急に」



 よくわからないけど、わたしの作ったものが、造りものの手足が、誰かの助けになってくれたらいいなと、そう思うのだ。「ふうん」と先生はわかったようなわからないような声でうなずいた。応援するぞと背中を押される。



「まあ、Aがやりたいことを見つけられてよかったよ……前なんて、何となく楽に生きていけたらいいとしか言ってなかったもんな」


先生がメガネのレンズごしにわたしのことをじっと見つめてくる。




「A……お前、なんか変わった?」

「わたしもそんな気がします」



どこの誰が変えてくれたのかは知らないけど、今のわたしは前のわたしより、かなり好きだ。

現代文明が引き合わせてくれる→←ゆるやかに若さを溶かして



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設定タグ:どろろ , 百鬼丸   
作品ジャンル:恋愛
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翡翠(プロフ) - 展開が神‼です!どろろにはまったのホント最近なんですけど、マジで最高です! (2022年3月23日 16時) (レス) @page17 id: d32df67ed7 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 朔弥139さん» はじめまして!感想うれしいです。アニメ完結から2年が経った作品でもあなた様のコメントをいただけたことで、いつかやろうと思っていた加筆修正に着手することができました。本当にありがとうございました。 (2021年7月3日 9時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
朔弥139(プロフ) - 初めまして、何度読み直しても好きな作品です。本当にありがとうございます (2021年6月12日 11時) (レス) id: 327451071d (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - あやかさん» 全て!?ありがとうございます……!ひさしぶりに自分で読み返すと拙く読みづらい文だと感じましたが、そんな風に言っていただけて……ありがたいです。またどこかでお会いできたらと思います!! (2020年3月17日 11時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - 全て読ませていただきました。ほんとに素敵な物語をありがとうございます。『どろろ』次回作をお待ちしています。よろしくお願いします。 (2020年3月9日 21時) (レス) id: e756cf6e94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:有希 | 作成日時:2019年6月28日 20時

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