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残酷と罵られても構わない ページ5

それから長いことひとりで草むらに寝転がっていた。どうにもならないことを考えたりして。百鬼丸がお堂に行ってしばらく経ってから行くことにした。我ながら情けない。だけどこれがわたしなのだ。


 もし会ってしまったなら、元の世界に帰るって伝えようと思った。会わなかったら会わなかったで、伝えないでおこうと思った。だってわたしが彼の立場だったら耐えられない。いつかすべてを忘れてしまうんだから、言っても言わなくてもいいじゃないというのがチキンの言い訳である。



 どろろに呆れられちゃうなぁ、と思いながら、お堂の扉を開ける。百鬼丸は……いなかった。ただお義父さんが、醍醐景光が、うずくまるようにして、今更すがりつくようにして、菩薩像を拝んでいた。




「……Aか?」

「はい」

「……私を、殺めに来たか」

「いいえ。不本意ながら。百鬼丸がそうしなかったから、それが正解なのでしょう」

「では何の用だ」

「あなたの後悔してる顔が見たくって」



 数秒間をおいてから、は、と小さく笑う声がした。自嘲めいた笑み。血塗れた顔が、ゆるゆると上を向く。



「A……私は、これから、どうすればいい?」

「生きればいいじゃないですか。せっかく生き延びたのですから」

「ッお前は……!領地が、兵が、壊滅した私に、肉親を失った私に、かつての己の過ちを知った私に、
それでも生きろと、そんな残酷なことを言うのか!!」

「そう、残酷なことを言っているのです」



 日本の歴史上わたしほど自分勝手な女はいないかもしれない。だって一国の民衆のために、ちっぽけなたったひとりの命を差し出すという精神が理解できないから。犠牲になったたのが百鬼丸だから、わたしは今回の件が許せないのだ。これが他の他人だったら違うのだろうけど。悪人?そうかもしれないね。わたしは壊れた鬼神像を見回した。彼の身体はさぞ美味かったろう?



「百鬼丸に一生後ろめたさを感じながら、罪悪感抱えながら、頭を垂れて謝り続けながら、生きてください」

それでは、さようなら→←我武者羅に抱いて



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設定タグ:どろろ , 百鬼丸   
作品ジャンル:恋愛
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翡翠(プロフ) - 展開が神‼です!どろろにはまったのホント最近なんですけど、マジで最高です! (2022年3月23日 16時) (レス) @page17 id: d32df67ed7 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 朔弥139さん» はじめまして!感想うれしいです。アニメ完結から2年が経った作品でもあなた様のコメントをいただけたことで、いつかやろうと思っていた加筆修正に着手することができました。本当にありがとうございました。 (2021年7月3日 9時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
朔弥139(プロフ) - 初めまして、何度読み直しても好きな作品です。本当にありがとうございます (2021年6月12日 11時) (レス) id: 327451071d (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - あやかさん» 全て!?ありがとうございます……!ひさしぶりに自分で読み返すと拙く読みづらい文だと感じましたが、そんな風に言っていただけて……ありがたいです。またどこかでお会いできたらと思います!! (2020年3月17日 11時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - 全て読ませていただきました。ほんとに素敵な物語をありがとうございます。『どろろ』次回作をお待ちしています。よろしくお願いします。 (2020年3月9日 21時) (レス) id: e756cf6e94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:有希 | 作成日時:2019年6月28日 20時

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