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我武者羅に抱いて ページ4

あいしてる。愛してる、A。身体を取り戻すことで、どれだけ自分が変わろうと、その思いだけはずっと変わらなかった。息をするみたいに、血と共にこの身体中に通っていた。生まれついたときから、何もかも理不尽に奪われてしまった俺だけど……Aだけは仏様が与えてくれた。俺の唯一。俺のA。



「……A」

「うん?」

「こういう、ときは、目をつむれ」

「あはは。百鬼丸にそんなこと言われるなんて……あ、ちょっと、拗ねないでよ。嬉しいの」



 ほんとは目をつむりたくなんてない。せっかく百鬼丸といるんだから。片時も目を閉じたくない。ずっとその栗色を見つめていたい。そう言ったら、照れるかな、笑うかな、呆れるかな。


 もうわたしたちの間を隔てるものは何もない。義手の肘の部分にあった刀の端に気をつける必要はない。お互いがどこにいてどんな表情をしているのかわかる。当たり前なのかもしれない。だけど、わたしたちにとっては信じらんないようなことなんだ。覆い被さってくる百鬼丸の首裏に手を回した。



*


「ひゃ……ッ、ま、あ、アッ」

「A……A……」



 死んじゃう、と思った。だってこんなの知らない。栗色の視線がわたしの頭のてっぺんから足先まで浴びせられる。ぬるい両手でもう二度と離さないっていうくらい強く握られる。どうしようもなく感じる。

 涙が止まらない。初めてのときでもこんなに涙は出なかったのに。次から次へとあふれるそれに熱い舌がおいしそうに舐めとっていく。絶え間なく与えられる感覚にどうにかなりそうだった。いやいやと言っていると唇をふさがれて、喉元で消えていく。

 百鬼丸はわたしを一晩中抱いていた。まるでこれが最後だと知っているみたいに。我武者羅に身体を重ねた。わたしは彼の下でゆすられながら、手を伸ばして、汗に濡れた眉毛をなぞっていた。



 夜が明けると、触れたところから身動いだのが伝わってきて、ああと思う。いよいよ旅に出るんだね。お別れだね。わたしは身体を起こして顔を見つめた。笑えていたと思う。



「A。俺は、行きたいところが、あるんだ」

残酷と罵られても構わない→←きみへの想いは祈りと似ている



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設定タグ:どろろ , 百鬼丸   
作品ジャンル:恋愛
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翡翠(プロフ) - 展開が神‼です!どろろにはまったのホント最近なんですけど、マジで最高です! (2022年3月23日 16時) (レス) @page17 id: d32df67ed7 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 朔弥139さん» はじめまして!感想うれしいです。アニメ完結から2年が経った作品でもあなた様のコメントをいただけたことで、いつかやろうと思っていた加筆修正に着手することができました。本当にありがとうございました。 (2021年7月3日 9時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
朔弥139(プロフ) - 初めまして、何度読み直しても好きな作品です。本当にありがとうございます (2021年6月12日 11時) (レス) id: 327451071d (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - あやかさん» 全て!?ありがとうございます……!ひさしぶりに自分で読み返すと拙く読みづらい文だと感じましたが、そんな風に言っていただけて……ありがたいです。またどこかでお会いできたらと思います!! (2020年3月17日 11時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - 全て読ませていただきました。ほんとに素敵な物語をありがとうございます。『どろろ』次回作をお待ちしています。よろしくお願いします。 (2020年3月9日 21時) (レス) id: e756cf6e94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:有希 | 作成日時:2019年6月28日 20時

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