きみへの想いは祈りと似ている ページ3
「あのさ、どろろ」
「言うなよ」
「え?」
「どーせ改めてお別れの言葉を、みたいなこったろ。わかってんだよ」
さすがどろろ。わたしの行動パターン読めてるな。「帰るのかい?A」と琵琶丸さんが現れる。近いうちに、とうなずくと、そいつぁ寂しくなるねと笑ってくれた。
ふと寿海さん……父さんに撫でくり回されていた百鬼丸がわたしの方へ向いた。わたしが手を振ってみせると栗色がとろける。そんな目で見ないでよ、ドキドキしちゃう。
あーもう、ほっぺたも目頭も熱くなる。泣きそうになっているのがばれたくなくて、どろろの胸に顔を埋めた。
「勝手に言わせてよ。ありがとね。どろろのおかげで、なんつーの、人のあるべき姿をちょっとは知れた気がするよ。わたしたちの旅にどろろは必要不可欠だったね」
「……おいら二人に守られっぱなしだったけどよ」
「いいんだよそれで。どろろはまだ子どもなんだから。これからいくらでも強くなればいい」
どろろは笑った。さよならは言わないでおこうか。
「琵琶丸さんも、本当にありがとうございました。色々とお世話になりました」
「こちらこそ、ありがとう。醍醐の因果がまさかこんな大団円で落ち着くとは、さすがのあたしも予想がつかなかったねぇ。ま……これもまた一興といったところかね。それにAから未来の話を聞けて、ちょっと救われたよ」
宴は続く。
*
ふらりと百鬼丸が近寄ってきて、わたしの手を引いていった。わたしたちは誰にも気づかれないうちに森の奥へ消える。宴の主役が抜け出しちゃった。黒髪ロングに見とれている場合じゃない。言え。言うんだA。わたしはもうすぐ帰るんだって。そのときだった。まぶしい。急に森を抜け、日を浴びたから目がチカチカする。
「見て、A」
見てるよ。いつだって。まばたきが惜しいよ。笑った百鬼丸が横に顔を向ける。つられて見ると空が燃えていた。それは、かつての別天地を赤く染め上げるような空。百鬼丸はまるで何かに祈るような声音でわたしの名前を呼ぶ。A。A。
「愛してる」
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翡翠(プロフ) - 展開が神‼です!どろろにはまったのホント最近なんですけど、マジで最高です! (2022年3月23日 16時) (レス) @page17 id: d32df67ed7 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 朔弥139さん» はじめまして!感想うれしいです。アニメ完結から2年が経った作品でもあなた様のコメントをいただけたことで、いつかやろうと思っていた加筆修正に着手することができました。本当にありがとうございました。 (2021年7月3日 9時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
朔弥139(プロフ) - 初めまして、何度読み直しても好きな作品です。本当にありがとうございます (2021年6月12日 11時) (レス) id: 327451071d (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - あやかさん» 全て!?ありがとうございます……!ひさしぶりに自分で読み返すと拙く読みづらい文だと感じましたが、そんな風に言っていただけて……ありがたいです。またどこかでお会いできたらと思います!! (2020年3月17日 11時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - 全て読ませていただきました。ほんとに素敵な物語をありがとうございます。『どろろ』次回作をお待ちしています。よろしくお願いします。 (2020年3月9日 21時) (レス) id: e756cf6e94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:有希 | 作成日時:2019年6月28日 20時